抄録 |
【目的】2008年10月より厚労省急性膵炎重症度判定基準(以下新基準)が改訂され,9個の予後因子によるスコア(以下スコア)または造影CTのみでの重症度判定を可能とした.また新基準では中等症がなくなり,軽症・重症の2分類となった.よって一般臨床医にとっても新基準の特性を理解することを必要とした.今回我々は当院における新基準後の急性膵炎症例を検討することにより,新基準の有用性と問題点について再評価を行った.【対象と方法】対象は新基準導入後の2008年10月から2010年12月までに急性膵炎と診断され入院となった113例.検討のために1)スコア・CT両軽症,2)CTのみ重症,3)スコアのみ重症,4)両重症の4カテゴリーに分類し,retrospectiveに検討した.【結果】男:女=69:44,平均年齢62.6±18.0歳.死亡例1例.入院時新基準重症度判定軽症92例(81.4%),重症21例(18.6%).1)92例:a)予後因子スコア0/1/2点:39/35/18例,b)重症移行率 0/1/2点:0/2.9/11.1%,c)症状改善日数 0/1/2点: 各々4.3日,d)合併症 2例(膿瘍,仮性のう胞),e)死亡 1例(致命率1.1%).2)13例:a)予後因子スコア0/1/2点:2/9/2例,b)スコア重症移行率 0/1/2点:0/11.1/50%,c)症状改善日数 0/1/2点:9.5/6.9/12日,d)合併症 2例(膿瘍).3)7例:a)予後因子スコア3/4点:4/2例,b)症状改善日数 3/4点:4.2/5日c)合併症 0例.4)2例:a)予後因子スコア3/4点:1/1例,b)症状改善日数 3/4点:5/9日,c)合併症 1例(膿瘍).【考察】軽症でも入院時スコアが高いほど重症移行率が高くなる傾向にあり,経時的に重症度判定を行い重症化を見逃さないことが重要である.またCTのみ重症例も存在し,スコア軽症であってもCT施行が必要と考えられた.【結語】新基準に基づいて治療が行われた.経時的に重症度判定を行い,適切な治療を行うことにより良好な治療成績を得ることができると考えられた. |