セッション情報 |
パネルディスカッション18(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)
新重症度基準からみた重症急性膵炎の診療
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タイトル |
消PD18-8:重症度判定基準の改訂に伴う急性膵炎診療の変化 -転送症例を対象とした検討-
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演者 |
池浦 司(関西医大・消化器肝臓内科) |
共同演者 |
高岡 亮(関西医大・消化器肝臓内科), 岡崎 和一(関西医大・消化器肝臓内科) |
抄録 |
【目的】急性膵炎の重症度基準は2008年10月に改訂された。新基準は旧基準に比べ簡便で分かりやすいだけではなく、その重症度判定能も高い精度を有すると報告されている。今回われわれは、重症度基準の改訂に伴い急性膵炎の診療はどのように変化したかを、重症急性膵炎に対応可能な施設の立場から転送症例を対象に検討をおこなった。【方法】対象は2006年1月から2010年12月の間に、入院病棟を有する一般病院において急性膵炎と診断されたのち当院へ転送された61例である。これらを2008年10月より以前、つまり旧基準に準じて診療をおこなった30例と2008年10月より以降、つまり新基準に準じて診療をおこなった31例に分け検討をおこなった。重症度は発症から48時間以内の前医または当院での予後因子スコア、造影CT所見をもとに判定し、欠損項目は陰性として扱った。【成績】両群の性別、発症年齢、成因に有意な差はなかった。重症例はA群56.7%、B群41.9%とA群で高率であるのに対し、死亡率はA群6.7%、B群22.6%とB群で高率であった。A群およびB群の動注療法、SDD、CHDFの施行率は、それぞれ33.3% vs. 29.0%、3.3% vs. 3.2%、13.3% vs. 16.1%であり、両群に優位な差を認めなかった。特殊治療や緊急ERCPをおこなわず輸液などの基本的治療のみで軽快した症例はA群50.0%、B群32.3%とB群で少なく、CRP陰性化までの期間が10日以内と治療経過が良好であった症例もA群35.7%、B群14.8%とB群で少なくなっていた。【結論】重症度基準の改訂により、一般病院から高次医療機関への搬送は、基本的治療で対応できる軽症例は少なくなっている反面、致死の可能性のある重症度の高い症例は多くなっていることが分かった。以上より、急性膵炎診療においてそれぞれの医療機関の役割分担がなされつつあると推測された。しかし、新基準で軽症であっても死亡例があることは知られているため、経時的に重症度判定をおこない適切な転送の時機を逸することのないよう引き続き一般臨床医に啓蒙していかなければならない。 |
索引用語 |
急性膵炎, 重症度判定基準 |