セッション情報 |
シンポジウム15(消化器外科学会・消化器病学会合同)
下部直腸癌側方リンパ節転移に対する診断と治療方針
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タイトル |
外S15-11:直腸癌術前化学放射線療法による側方リンパ節転移の制御
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演者 |
川合 一茂(東京大・腫瘍外科) |
共同演者 |
須並 英二(東京大・腫瘍外科), 渡邉 聡明(東京大・腫瘍外科) |
抄録 |
背景)直腸癌の側方リンパ節に対する治療については未だ施設間により異なるのが現状である。当科ではこれまで、術前放射線療法群と側方郭清群で局所再発率に差がなく、その一方術後の合併症は側方郭清群で有意に高いことを報告してきた。対象・方法)2003年11月から2011年12月までに下部局所進行直腸癌に対し術前補助化学放射線療法(CRT)を施行し、その後根治術を施行した115例を対象とした。CRTとしては5FUベースの経口化学療法及び1.8Gy×28回分割照射にて放射線療法を施行した。CRT施行前後の画像診断(CT, PET, MRI等)にて側方リンパ節転移の有無を評価し、リンパ節転移が疑われた症例のみ系統的側方郭清を施行し、原則的に予防的側方郭清は行っていない。結果)側方郭清を施行したのは115例中3例であり、いずれも術前画像診断にて指摘されたリンパ節が転移陽性であった。一方側方郭清を施行しなかった112例のうち、フォローアップの期間(88日-8年3ヶ月 中央値3年)に初回再発部位が側方リンパ節転移であった症例は1例(0.9%)であった。この1例は骨盤内臓全摘後、S4根部近傍での再発であり治療としては外科的切除が施行され、現在まで無再発生存中である。閉鎖リンパ節や総腸骨・外腸骨領域にリンパ節再発を来した症例はなかった。考察)CRTを行わない症例での側方リンパ節陽性率は大腸癌研究会のデータでは10%前後と報告されている。これに対し今回の我々の検討では側方リンパ節転移率は3.5%と想定され、CRTにより側方リンパ節に対する良好な制御効果が得られていると考えられた。術前の画像診断による側方転移診断の可能性を考慮すると、術前CRTを施行した場合の予防的な側方郭清の必要性は低いと考える。今後予防的側方郭清の省略をより確実に行うための術前診断の精度向上が必要である。 |
索引用語 |
直腸癌, 化学放射線療法 |