セッション情報 パネルディスカッション19(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的製剤時代におけるIBDの治療とその選択-粘膜治癒と長期的展望

タイトル 消PD19-1:

難治性潰瘍性大腸炎におけるインフリキシマブの有効性の検討

演者 吉村 直樹(社会保険中央総合病院・内科)
共同演者 酒匂 美奈子(社会保険中央総合病院・内科), 高添 正和(社会保険中央総合病院・内科)
抄録 【目的】タクロリムス(FK506)、インフリキシマブ(IFX)の適用拡大により難治性潰瘍性大腸炎(UC)における内科治療の選択肢が増え、寛解導入率、維持率の更なる向上が期待される。今回IFXを導入したUC症例の治療成績を検証しIFXのUC治療における有効性と位置づけについて検討した。【方法】当院にて平成22年6月以降IFXを導入した50例(平均年齢:36.2±11.3歳)を対象とし、RachmilewitzのClinical Activity Index(CAI)を用いて有効性について検討した。【成績】導入目的別で検証するとa)シクロスポリン(CsA)無効の手術回避目的1例、b)CsAが有効であったがくすぶっている症例7例、c)CsAで寛解後の短期再燃症例3例、d)FK506抵抗性症例1例、e)ステロイド(PSL)抵抗性症例9例、f)PSL依存性でPSLからの離脱目的21例、g)腸管外合併症の治療目的5例、h)回腸嚢炎が3例あった。3回(0、2、6週)の投与で有効性を認め維持投与に移行した症例は37例(74%)、反応を認めず中止とした症例は13例(c)1例、e)1例、f)11例)あり、PSL依存性症例の有効率は47.6%と低かった。経時的平均CAIは投与前(0週時)9.6±3.5、2週時4.9±3.2、6週時4.6±3.4、8週時4.8±3.7であり初回投与2週後のCAIの低下率は他の区間に比し有意に大きく(p<0.01)、IFX投与2週後が有効性を評価する上で有用なポイントであることが示唆された。また、a)+b)CsA抵抗性群、e)PSL抵抗性群、f) PSL依存性群の3群間でCAIの低下率を検証するとf)群は他の2群に比し0週から2週後の平均低下率は有意に小さかった(p<0.01)。更に、維持療法に移行し14週以上経過観察できている症例はa)+b)群5例、e)群5例、f)群9例あるが、再燃なく寛解維持している症例はa)+b)群2例(40%)、e)群5例(100%)、f)群4例(44.4%)あり、PSL抵抗性群の長期予後は他の2群に比し良好で5例中4例は30週時でも寛解を維持し内視鏡的粘膜治癒も認めた。【結論】UCにおけるIFXの有効性も投与2週以内の早期に認められ、PSL抵抗性の難治症例ではIFXが寛解導入率、長期予後の向上に寄与する治療戦略と成り得る。
索引用語 潰瘍性大腸炎, インフリキシマブ