セッション情報 パネルディスカッション19(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的製剤時代におけるIBDの治療とその選択-粘膜治癒と長期的展望

タイトル 内PD19-3:

難治性潰瘍性大腸炎に対するタクロリムスの粘膜治癒効果に関する検討-免疫調節剤は生物学的製剤による粘膜治癒を上回るか?-

演者 松浦 稔(京都大附属病院・消化器内科)
共同演者 仲瀬 裕志(京都大附属病院・消化器内科), 千葉 勉(京都大附属病院・消化器内科)
抄録 【背景】Infliximabの登場以来,炎症性腸疾患(IBD)における粘膜治癒(mucosal healing;MH)は重要な予後規定因子であることが明らかになってきた.一方,タクロリムス(Tacrolimus;以下Tac)は即効性かつ強力な免疫抑制作用を有するIBD治療薬の一つであるが,MH促進効果については未だ明らかではない.そこで今回我々は,Tac治療導入後の内視鏡所見をretrospectiveに解析し,Tac治療によるMHとその臨床経過に与える影響について検討した.【方法】対象は2001年4月から2011年3月までに当院でTacによる寛解導入療法を行った難治性潰瘍性大腸炎患者のうち,Tac投与開始前1ヶ月以内と開始後3ヶ月以内に各々少なくとも1回は大腸内視鏡検査を施行された21例.Tac投与開始後90日以内に,MHに至った症例(MH群)とそれ以外(non-MH群)に分け,その背景因子(年齢,罹患期間,罹患範囲など),寛解導入率,再燃率,手術転帰ついて検討した.尚,内視鏡所見の評価は直腸~S状結腸で行い,内視鏡的活動度の判定にはMayo scoreを用いてscore 0-1をMHと定義した.臨床的疾患活動度はLichitiger Index を用い,4以下を寛解と定義した.【成績】1)Tac投与開始後90日以内にMHを得られたのは21例中8例(38.1%)であった(MH群8例,non-MH群13例).2)Tac開始6ヶ月以内に寛解導入に至った割合はMH群で8例中8例(100%),non-MH群で13例中7例(53.8%)であった.3)寛解導入後1年以内の再燃率はMH群 で有意に低かった(MH群:2例/8例(25.0%),non-MH群:6例/7例(85.7%)).4)non-MH群 では手術転帰に至る症例が有意に多かった(MH群:1例/8例(12.5%),non-MH群:6例/13例(46.2%)).5)その他の臨床的背景因子については両群間に有意差を認めなかった.【結論】潰瘍性大腸炎に対するTac治療によりMHが得られた症例では良好な臨床経過を辿ることが示唆された.TacによるMHの判定時期,MHに影響を与える因子については今後の検討が必要と考えられた.
索引用語 タクロリムス, 粘膜治癒