セッション情報 パネルディスカッション19(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的製剤時代におけるIBDの治療とその選択-粘膜治癒と長期的展望

タイトル 消PD19-5:

難治性潰瘍性大腸炎に対するinfliximabの治療効果、粘膜治癒効果の検討 tacrolimusとの比較を中心に

演者 黒羽 正剛(東北大病院・消化器内科)
共同演者 長澤 仁嗣(東北大病院・消化器内科), 高橋 成一(東北大病院・消化器内科)
抄録 【目的】難治性潰瘍性大腸炎(UC)に対する新たな寛解導入療法としてinfliximab(IFX)が登場し治療成績の向上が期待されている.当科ではステロイド抵抗性,依存性の難治性UC 症例にIFXもしくはtacrolimusを用いている.当院におけるIFX,tacrolimusの寛解導入,粘膜治癒効果,予後の現状を解析し治療効果を比較した.【対象と方法】難治性UC患者30名(IFX投与群12例,tacrolimus投与群18例)を対象とした.治療成績を薬剤投与前後のSutherland index(DAI)で,内視鏡所見をRachmilewitz indexのEndoscopic index(EI)を用いてretrospectiveに検討した.【結果】〔IFX群〕平均年齢30.4歳,平均罹患期間7.4年.投与前の平均DAI は7.9.投与後4カ月で2.17と低下し(p<0.01)寛解導入率(DAI<3)は67%(8例)であった.投与前平均EIは7.25(mild:3 moderate:8)で,投与後1.92(remmision:10 moderate:2)と低下し内視鏡的寛解導入率(EI≦4)は83%であった.平均観察期間は15.2週.投与中止は2例(無効:1,副作用:1),投与継続例では再燃を認めていない.〔tacrolimus群〕平均年齢30.9歳,平均罹患期間3.6年.投与前の平均DAI は8.5.投与3カ月で4.1と低下した(p<0.01).寛解導入率は55 %(10例)であった.投与前平均EIは8.6(mild:3 moderate:13 severe:2),投与後4.67(remmision:9 mild:5 moderate:3 severe:1)と低下し内視鏡的寛解導入率は50%であった.手術例は3例であった.tacrolimus投与終了後54%で(7/13)アザチオプリンに移行可能であった.IFX投与群はtacrolimus投与群より軽症な症例が多かった.両群ともDAI,EIが有意に改善したが,特にIFX群の内視鏡的粘膜治癒効果が高い傾向であった.Tacrolimus群では投与終了後再燃を来たす症例が少なくない(4/10例)が,IFX維持投与可能な症例では再燃を認めない結果だった.【結論】IFXは高い寛解導入効果,内視鏡的粘膜治癒効果を有する.維持投与が可能な為更より長期的な予後の改善も期待できるものと考えられた.
索引用語 潰瘍性大腸炎, infliximab