セッション情報 パネルディスカッション19(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的製剤時代におけるIBDの治療とその選択-粘膜治癒と長期的展望

タイトル 消PD19-6:

クローン病に対するInfliximabの短期および長期経過に及ぼす因子についての検討

演者 松岡 克善(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者 金井 隆典(慶應義塾大・消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 【目的】クローン病に対するInfliximab (IFX) 治療の適正化を図るために、IFXによる短期および長期成績とそれらの有効性予測因子を検討した。【方法】2002年5月から2010年9月までに、当院で疾患活動性に対してIFXを導入したクローン病138例を対象とし、短期および長期経過と、それらに影響を及ぼす因子をretrospectiveに解析した。短期成績については、0, 2, 6週の寛解導入療法後に8週毎の維持投与に移行できた群を「初期有効群」とした。長期成績については、(1) 短縮、増量なく8週毎の投与が可能で、(2) CRPが持続陰性の症例を「長期有効群」と定義した。【結果】138例中119例 (86.2%)が初期有効群であった。初期効果を認めなかった19例のうち6例は膿瘍やイレウスで早期に手術を要した。初期有効群119例のうち1年以上経過観察し得た100例について長期経過を検討したところ、52例 (52%)が長期有効群であった。初期効果に影響を及ぼす因子としては、「罹患年数」「perforating type」「IFX治療前の手術歴」が有意に抽出された。長期成績に関する因子としては、「寛解導入のためのIFX開始6週時のCRP陰性化」が寄与因子として抽出された。また、IFX投与開始6週時にCRPが陰性化しなかった群は、CRP陰性化群に比べて、観察期間中の累積手術率が高かった。【結論】IFXは初期効果として86.2%と高い有効率を示したが、長期に有効なのは52%と約半数であった。初期効果に寄与する因子は、いずれも腸管の機能障害を示唆するものであり、機能障害を起こす前にIFXを導入することが重要と考えられた。また、投与開始後早期のCRPの変化は、長期経過の予測因子として重要であり、CRPが早期に陰性化しない場合は、合併症の有無の検索や、投与期間の短縮などの対策を講じる必要があると考えられた。
索引用語 クローン病, infliximab