セッション情報 パネルディスカッション19(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

生物学的製剤時代におけるIBDの治療とその選択-粘膜治癒と長期的展望

タイトル 内PD19-7:

抗TNF-α抗体(インフリキシマブ: IFX・アダリムマブ: ADA)による瘢痕治癒を含む長期完全寛解(deep emission)を目指したクローン病の治療戦略

演者 山下 真幸(札幌厚生病院・IBDセンター)
共同演者 田中 浩紀(札幌厚生病院・IBDセンター), 本谷 聡(札幌厚生病院・IBDセンター)
抄録 【目的】抗TNF-α抗体によるクローン病の治療目標は単に症状を抑制するのみならず内視鏡的瘢痕治癒を目指したより高いゴールに変遷しつつある。臨床的寛解(CDAI<150)+内視鏡的瘢痕治癒を完全寛解(deep remission)と定義し、いかなる治療戦略が長期完全寛解率を向上しうるか検討した。【方法】2002年から2010年の間にIFXにより寛解導入された314例中6ヶ月以上計画的維持投与が可能であった225例と、2010年から現在までにADAにより寛解導入が試みられた38例を解析し、治療開始までの罹患期間、AZA/6MP併用の有無、2次無効の是非、狭窄等の腸管合併症等の観点から完全寛解率を検討した。【結果】1年後の臨床的寛解はIFX投与例の84.5%で維持可能であった。しかし26.4%が平均1.6年の経過で2次無効となり、かかる場合は瘢痕治癒率が低下した。AZA/6MP併用は3年経過後から2次無効率を低下させ(併用46.7%:非併用81.4%)臨床的寛解維持とともに瘢痕治癒率(併用58.5%:45.4%)も向上した。また腸管合併症を有する症例は2次無効に陥りやすく瘢痕治癒も期待できない例が多かった。一方、ADAの短期寛解率は48.5%で12W寛解維持率は全体の33.5%であった。完全寛解率は18.2%でありその多くが抗TNF-α抗体ナイーヴ例かIFX不耐例であり、IFX2次無効からADAへの切り替え例では寛解維持率が低く(13.3%)完全寛解は認めなかった。【結論】IFX計画的維持投与による完全寛解には1)AZA/6MPによる免疫調節薬をIFX開始時からの併用、2)これにより2次無効を回避すること(ただし腸管合併症がなく再寛解導入可能例では積極的に投与間隔短縮によるtight controlを行うこと)、3)罹患期間5年未満でのIFX投与、が重要であった。一方ADA維持投与による完全寛解にはAZA/6MP併用効果は明らかではなく罹患期間2年未満でのADA投与例、IFX/ADAナイーヴ例で完全寛解例を認めた。しかし維持困難例も多くADAにおいても2次無効対策が急務と思われた。
索引用語 インフリキシマブ, アダリムマブ