セッション情報 シンポジウム15(消化器外科学会・消化器病学会合同)

下部直腸癌側方リンパ節転移に対する診断と治療方針

タイトル 外S15-13追:

下部直腸癌側方リンパ節転移に対する治療方針

演者 硲 彰一(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学)
共同演者 岡 正朗(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学)
抄録 【はじめに】当科では、筋層を超える(cT3)ならびにリンパ節転移を認める(cN1)下部直腸癌に対して神経温存・側方郭清を標準術式としてきた。最近では側方郭清を含め全てを鏡視下に行っている。【適応と術式】側方郭清の適応は過去の症例解析から下部直腸癌・cT3・cN1以上とし、低分化や粘液癌ではcMPでも適応とする。また、深達度、腫瘍の局在や側方リンパ節の腫脹を勘案し、両側あるいは片側神経温存を行う。【腹腔鏡下側方リンパ節郭清について】自律神経温存・側方郭清術では狭い骨盤腔を自由な角度から近接・拡大視できる鏡視下手術のメリットは大きく、開腹よりも視野は良好である。開腹側方郭清と鏡視下直腸癌手術の双方に手慣れた術者であれば、鏡視下に根治性を損なうことなく側方郭清を施行可能と考える。【手技のポイント】(1)男性では膀胱漿膜を、女性では子宮広間膜を2-0プロリン直針で恥骨上腹壁から吊り上げると上膀胱動脈の走行を確認しやすい。(2)通常のポート以外に、筋膜クローザーを用いて血管テープを挿入し、腹壁外から尿管や内外腸骨動静脈を牽引して視野を確保する。(3)手技的には、下腹神経叢・左右下腹神経を骨盤壁から剥離してS3, S4が梨状筋近傍から合流し骨盤神経叢を形成するのを確認・温存する。尿管は腹膜とともに下腹部外側に牽引する。総腸骨動静脈から郭清を始め、外腸骨動脈・尿管間を十分足側まで剥離。右閉鎖腔郭清時は外腸骨動静脈を血管テープで内側に展開、左閉鎖腔は同動脈を外側に、静脈を内側に展開するのがコツ。内側は上膀胱動脈を、背側は坐骨神経、外側と底部は骨盤壁をメルクマールに脂肪組織を摘出し、閉鎖神経と動静脈を骨盤壁まで露出する。内腸骨動脈領域は下膀胱動脈以下の動脈をAlcock管まで切除郭清する。静脈系は温存して前面の脂肪織を切除する。【結語】下部直腸癌に対す腹腔鏡下側方郭清術は標準術式となり得る。
索引用語 直腸癌, 側方郭清