抄録 |
[背景]当院における直腸LSTの診断と治療戦略は,通常観察(色素散布を含む),NBI拡大観察,クリスタルバイオレット染色を用いた拡大観察による内視鏡診断のもと決定している.SM浸潤度の評価が困難かつ内視鏡での一括切除が困難な病変において,局所切除{内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD),経肛門的腫瘍切除},もしくはリンパ節郭清を伴う治療{腹腔鏡下肛門括約筋間切除術(L-ISR),腹腔鏡下低位前方切除術(L-LAR)}を考慮している.[目的]内視鏡的治療と腹腔鏡治療で切除されたLST病変の特徴を明らかにし,治療適応の決定が困難であった病変を検討した.[方法]2005年3月から2010年12月までに当院で初回治療された直腸LSTは110症例であった.腫瘍径・LSTのタイプ別による深達度,治療方法についてretrospectiveに検証した.[結果]対象例の内訳は,I.腺腫34例,II.M癌50例,III.SM-slight癌4例,IV.SM-massive癌22例.腫瘍径は10mm以上(27例);I.48.1%,II.37%,III.3.7%,IV.11.1%,20mm以上(37例);I.35.1%,II.40.5%,III.2.7%,IV.21.6%,30mm以上(20例);I.15%,II.60%,III.10%,IV.15%,40mm以上(26例);I.19.2%,II.50%,III.0%,IV.30.8%であった.肉眼形態ではLST-Mix type(72例);I.20.8%,II.58.3%,III.2.8%,IV.18.1%,LST-homogenous(11例);I.100%,LST-flat(17例);I.47.1%,II.35.3%,III.5.9%,IV.11.8%,LST-pseudo depressive(10例);I.0%,II.20%,III.10%,IV.80%であった.内視鏡治療したSM-massive癌の4例(18.2%)は完全生検目的のものであった.SM-slight癌では腹腔鏡3例(75%)でありover diagnosisによるものであった.以上からSM-massive癌で内視鏡的治療された病変と,SM-slight癌で腹腔鏡治療された病変は,全直腸の6.4%に認めた.[結論]直腸のLST病変は,ESDの適応となる病変が多くその選択には適確な内視鏡診断が重要である. |