抄録 |
【背景】直腸RbのSM病変における追加手術は人工肛門となる場合もあり,他部位のSM癌と比較し侵襲が高い。【対象と方法】今回は、2010年12月までに広島大学で大腸ESDを施行した319病変中、手技の安定した2006年4月以降のLST 191病変を対象に、直腸Rb(Rb)病変37例とRb以外の(非Rb)病変154例の腫瘍径、治療成績(一括切除率、穿孔率)を線維化の程度(既報のごとくF 0~2に分類)別に比較検討した。【結果】腫瘍径は、Rb病変 45.6mm±24.0, 非Rb病変 34.8mm±18.9で, 有意にRb病変の方が大きかった。一括切除率は、Rb病変; F0 100%(11/11), F1 100%(12/12), F2 79%(11/14), 全体 92%(34/37), 非Rb病変; F0 100%(47/47), F1 89%(62/70), F2 81%(30/37), 全体 90%(139/154)で差はなかった。穿孔率はRb病変; F0 0%(0/11), F1 0%(0/12), F2 0%(0/14), 全体 0%(0/37), 非Rb病変; F0 0%(0/47), F1 6%(4/70), F2 8%(3/37), 全体 5%(7/154)で,Rb病変は非Rb病変と比較して大きいにもかかわらず穿孔率は低かった。【まとめ】これまで我々は、主組織型 tub/pap, 脈管侵襲陰性, 簇出G1を満たす大腸SM癌のリンパ節転移率は,深達度にかかわらず1.0%前後であることを報告してきた。一方、上記のように,直腸RbのLST病変は大きくても安全にESDが施行できる。従って、直腸RbのcSM1~2(工藤分類)程度のLSTに対しては、まず完全摘除生検としてESDを行い、その病理所見(リンパ節転移リスクの程度)と患者背景(年齢,合併症,身体的活動度,患者の意志など)を総合的に判定し追加治療の必要性やその術式を決定することが望ましいと考える。 |