セッション情報 パネルディスカッション20(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

直腸LSTの診断と治療の最前線

タイトル 内PD20-6追2:

直腸LST内視鏡治療におけるESDの意義

演者 小泉 浩一(がん・感染症センター都立駒込病院・内視鏡科)
共同演者 服部 公昭(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科), 稲葉 良彦(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科)
抄録 【背景】内視鏡的粘膜切開剥離法(ESD)はLSTに対する治療法としても有効である.今回,直腸LSTにおけるESDの意義を施行例の解析から検討した.【方法】2004年10月から2010年12月までに当院でESDを行った大腸上皮性腫瘍370病変中,直腸病変は128病変で,うちLST66病変を対象に臨床病理学的検討と長期予後について検討した。【成績】病変の分布は,Rs3例,Ra 23例,Rb40例.Rb例中,歯状線1cm以内の肛門管にかかる病変は7例であった.肉眼型ではLST-G 54例,LST-NG 8例で,病変の最大径は 15-145mm,平均 43.2mm 腺腫 14例 pM癌 44例,pSM癌 8例 病理学的完全一括切除率はadenoma 85.7%, pM癌 84.1%, pSM癌 62.5%で 切除時または回収時に分割となったのは6例であった.所要時間は全病変では162(22-870)分であった.ヒューストン弁をまたぐ5cm以上の病変,肛門管の3/4周以上の病変,高度の線維化,血管増生などが長時間化の主要因であったが,SBナイフなどの新しいデバイスの使用により徐々に短縮している.重篤な偶発症は止血術を要する出血が3例, 穿孔を1例に認めたが,いずれも保存的に軽快した.亜全周性病変1例で狭窄をきたしたが,バルーン拡張術により改善した.3/4周以上の病変4例では特に狭窄は認めていない.pSM癌例では,危険因子陽性群5例中4例が外科的追加切除施行となり,うち一例でリンパ節転移陽性であった.一方,残る内視鏡切除後経過観察群中,2例で初回サーベイランス検査時に粘膜病変の遺残を認め追加内視鏡治療を行ったがその後は再発なく,現在まで4ヶ月から6年6ヶ月までの経過観察期間では再発を認めていない.【考察】ESDにより,肛門管病変や,上部から下部直腸にまたがって広がる病変も切除可能であった.また,pSM癌や,相当の線維化を伴う病変の切除が可能であり,特に下部直腸では至適な術式を決定するための深達度や脈管侵襲を検討するための完全生検としてのESDの意義があると考えられた.
索引用語 直腸, LST