セッション情報 パネルディスカッション20(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

直腸LSTの診断と治療の最前線

タイトル 内PD20-9追5:

内視鏡治療適応の直腸LSTにおけるEMRの治療成績

演者 倉谷 義智(くぼかわ病院・内科)
共同演者 田村 智(田村クリニック胃腸科・内科), 上田 弘(高知県立幡多けんみん病院・消化器科)
抄録 【目的】
直腸LST(laterally spreading tumor)に対する内視鏡的粘膜切除術(EMR)および分割粘膜切除術(EPMR)の有用性を評価する。
【対象・方法】
1237病変の直腸腫瘍のうち、85病変のLST を認めた。LSTは、工藤らの定義に従って、腫瘍径10mm以上の表面型腫瘍とした。そのうちEMR/EPMRを施行した67症例67病変に対し大腸内視鏡による経過観察を行った。期間は平均37.2±28.7ヵ月(3から140ヶ月)であった。
【結果】
67病変の内訳は、男女比1.58:1、部位別では上部直腸(Ra,Rs)38病変(56.7%)、下部直腸(Rb)29病変(43.3%)。腫瘍径は10から40mmに分布し、上部・下部直腸それぞれの平均腫瘍径は33.5±11.1mm、 20.1±8.4mmであった。
処置の内訳はEMR 60病変(89.6%)、EPMR 7病変(10.4%)。病理組織診断は腺腫33病変(49.3%)、早期癌は34病変(50.7%)で、pM;28病変、pSM:6病変(脈管侵襲陰性のsm1/浸潤実測値1000μm以下)であった。
7病変(10.4%)で局所再発を認め、上部直腸2病変(2/38、5.3%)下部直腸5病変(5/29、17.2%)( P = 0.2364)であった。下部直腸の29病変のうち、肛門管の扁平上皮に接する5病変のうち4病変で再発を認めたが、それ以外の24病変では再発は1病変のみであった(P=0.0118)。
局所再発の7病変は、いずれも内視鏡による追加治療で根治されており、4病変は2回目で治癒、2病変は3回目で治癒し、1例は4回の治療で治癒した。
【考察】
拡大観察を用いてpit patternを評価する事で、正確な術前診断が可能である。EMR/EPMR施行後早期の経過観察と遺残に対する追加治療を行うにより根治が得られた。
有意差は無いが下部直腸で再発率が高い傾向があった。下部直腸では、歯状線に接する病変で、有意に再発率が高かったが、これは処置の手技的困難さが原因と考えられた。
索引用語 直腸LST, 内視鏡的粘膜切除術