抄録 |
(緒言) 固有筋層を超えて浸潤する下部進行直腸癌では側方郭清が本邦の標準治療であるが,予防的側方郭清の意義についてはエビデンスは無く,JCOG0212の結果を待つところである.当院では2008年6月より腹膜翻部以下, 深達度A以深の進行直腸腺癌に対し,術前(化学)放射線療法を施行し,予防的側方郭清を省略し腹腔鏡下にTotal Mesorectal Excision(TME)を行っている. 深達度MPかAの鑑別が困難で,放射線治療の晩期合併症を避けたい若年者症例には,腹腔鏡下に側方郭清を追加しており,その短期成績を報告する.(方法)2008年6月より2011年12月までに術前(化学)放射線療法を用い,腹腔鏡下にTMEを施行した症例は24例である.男女比 21:3 .年齢57.9+/-12歳.肛門縁からの距離3.1cm,BMI 22.6であった.術前放射線療法単独9例,経口抗がん剤併用15(TS1 6, UFT 5, UZEL+UFT 3, カペシタビン 1)(例).病理学的CRは1例にみられた. 術後病期は0:1, I:6, II:7, IIIa:5, IIIb:1, IV:4 (例). 術後平均観察期間は19.5ヶ月で全例生存中である.再発生存7( StageIV:4, IIIa:1, II:2)(例), 無再発生存 17例であり,骨盤内再発は側方転移再発を含めてみられなかった. 腹腔鏡下側方郭清は 5例に施行し術式は3例がISR,APR LAR各1例. 両側郭清3例, 片側郭清2例. 郭清時間は両側で116分, 片側 60分, 出血量は少量であった. 合併症は1例にIVRで軽快したリンパ膿腫1例, 神経因性膀胱1例を経験した.(考察) 術前(化学)放射線療法により,下部進行直腸癌に対する予防的側方郭清は省略し得る可能性があるが,晩期合併症が憂慮される症例に対しては腹腔鏡下に予防的側方郭清も可能と考えられる. (結論) 予防的郭清を要する下部進行直腸癌に対して腹腔鏡下手術は,これらの治療手技を併用して適応拡大可能と考えられる. |