セッション情報 パネルディスカッション20(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

直腸LSTの診断と治療の最前線

タイトル 内PD20-13:

直腸ESDにおける手技的困難因子の検討

演者 浦岡 俊夫(岡山大病院・光学医療診療部DELIMITER慶應義塾大・腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門)
共同演者 矢作 直久(慶應義塾大・腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門), 岡田 裕之(岡山大病院・光学医療診療部)
抄録 目的:大腸ESDを導入する際は、一般に直腸から開始することが推奨されているが、その手技的困難性に関する検討は少ない。今回、直腸ESDの手技的困難因子を明らかにすることを目的に検討を行った。
方法:対象は、2006年4月~2010年12月に施行された大腸ESD 247病変のうち、直腸LST 66病変。手技的困難性の予測危険因子として、1. 腫瘍径≧50mm, 2. LST-NG, 3. 2ひだ以上跨ぐ, 4. ひだ上に病変中心部が位置する, 5. 歯状線上もしくは接する, 6. ひだの引きつれ・生検痕, 7. 内視鏡反転操作が不可能・困難, 8. 不安定な内視鏡操作の有無を前向きにデータ収集した。手技的困難としてのアウトカムを i. 施行時間≧150分(腹腔鏡手術時間より), ii. 複数のナイフの使用, iii. 頻回な出血(定義:20回以上の凝固止血), iv. 穿孔、v. 分割切除と設定し、p<0.05を採用、p>0.1にて除外と設定したステップワイズ法にてロジスティック多変量解析を行った。
結果:対象病変の治療成績:平均腫瘍径:46.8±24.9mm、一括切除率:95.5%、施行時間(中央値):90分、穿孔1.5%(1例:保存的加療にて軽快)、後出血 0%。手技的困難性の各アウトカムに関する予測危険因子は、i. 施行時間≧150分:腫瘍径≧50mm(OR 22.3), ひだの引きつれ・生検痕(OR 27.0), ii. 複数のナイフの使用:腫瘍径≧50mm(OR 3.9), 内視鏡反転操作が不可能・困難(OR 5.1), iii. 頻回な出血: 歯状線上もしくは接する(OR 7.5), 腫瘍径≧50mm(OR 5.0), iv. 穿孔および分割切除:有意な危険因子は認めず。
結語:大腸ESDを直腸から導入する際は、手技的困難性の予測危険因子(特に、多くのアウトカムにおける予測危険因子であった「腫瘍径≧50mm」)を術前に認めない病変から開始することが望ましく、トレーニングシステムの構築において、手技的困難性の予測危険因子を考慮していく必要性が考えられた。
索引用語 直腸ESD, 手技的困難因子