セッション情報 パネルディスカッション20(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

直腸LSTの診断と治療の最前線

タイトル 内PD20-14:

直腸LSTに対するESDの有用性

演者 三谷 年史(虎の門病院・消化器内科)
共同演者 布袋屋 修(虎の門病院・消化器内科), 貝瀬 満(虎の門病院・消化器内科)
抄録 【目的】内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、大腸腫瘍においてもその有用性から治療法の一つとして普及しつつあり、特に直腸においては機能温存の意味からもその有用性が数多く報告されている。当院では術前の拡大内視鏡、超音波内視鏡検査で癌が疑われた病変のうち、明らかなsm深部浸潤を認めず、サイズおよび部位などの問題からEMRでは一括切除が困難な病変を大腸ESDの適応と考え2005年6月の大腸ESD導入以降、649症例を経験し、そのうち直腸病変は97症例認めている。今回我々は直腸ESDの治療成績からLSTに対するESDの有効性及び安全性について検討した。【方法】直腸病変は97症例のうちLST69病変をL群、その他の28病変をN群とし、その臨床背景や治療成績を比較検討した。楕円換算した切除検体面積を手術時間で割った剥離速度を治療のスムースさの指標とした。【成績】大腸ESD全体の治療成績は一括切除率97.8%、治癒切除率83.8%、穿孔4.2%、後出血3.4%であった。術前の拡大内視鏡、超音波内視鏡検査による質的診断、深達度診断において有為差は無いもののL群で正診率が高い傾向にあった(質的診断88.9: 72.2%、深達度診断86.1: 77.8%)。L群とN群で年齢、局在、一括切除率、治癒切除率に差はなかったが、腫瘍径はL群で有意に大きく(52.0: 20.6mm, p<0.01)、手術時間は長い(78.1: 40.6分, p<0.01)が剥離速度は有意に速かった(32.5: 17.4mm2/分, p<0.01)。術後経過(発熱・白血球数上昇・CRP上昇)に有為差は無く、穿孔はL群で2例、後出血はL群5例、N群1例認めたがいずれも保存的に軽快した。【結論】直腸LSTはサイズが大きくESDに時間がかかるが剥離はむしろスムーズで、術前検査を十分に行い慎重に適応病変を判断することで臓器温存の面からも他の直腸病変と同様にESDの良い適応となると考えられる。
索引用語 大腸ESD, LST