セッション情報 パネルディスカッション20(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

直腸LSTの診断と治療の最前線

タイトル 内PD20-16追7:

直腸LSTに対するSBナイフJrタイプを用いたESD

演者 本間 清明(日本海総合病院・治療内視鏡科)
共同演者 大滝 雄造(日本海総合病院・治療内視鏡科), 大久保 俊一(日本海総合病院・治療内視鏡科)
抄録 【目的】
 内視鏡の操作性が良好で腹腔内に位置しない直腸では、EMRで一括切除が難しいLST病変に対して、詳細な検討後にESDを選択されることが少なくない。当院ではこのような場合(顆粒均一型を除く)、SBナイフJrタイプを用いておりその有用性を検討した。
【方法】
 2008年8月~2010年9月までの間、SBナイフJrタイプを用いてESDを施行した直腸LST病変32例(LST-NG16例、LST-G(結節混在型)16例)と、同時期にEPMRを施行した大腸LST(顆粒均一型)病変10例を対象とした。
【結果】
 ESD施行例は、平均病変径40.9±27.7mm、平均術時間44±17分、一括切除率100%、術後出血例・穿孔例・半年後経過観察での再発例は認めなった。また、全例癌組織を含み、粘膜下層の状況も含めて病理検討は十分行え、粘膜下層浸潤を伴う病変は4例(1000μm以上の浸潤を伴う病変1例)であった。単一処置具での完遂率は87.9%であった。
 EPMR施行例は、平均病変径36.6±6.5mm、平均術時間31±13分、術後出血1例、穿孔発症0例、半年後経過観察で局所再発1例を認めた。病理組織は、腺腫4例、粘膜内癌6例、再構築の難しい例が2例認められた。
【考察】
 直腸におけるESDは良好な操作性を得やすい一方、粘膜下層に豊富な血管と線維を認めることが少なくない。特に肛門管では操作性にも制限が加わり、安定した鋭利な切離操作と止血操作も可能なSBナイフJrタイプは有用であった。また、今回の検討では平均術時間も1時間を切り、最長90分間であった。なお、他デバイスによる口側反転操作の組み合わせも手技の簡略化には有効で、単一処置具完遂率が8割強であったことに反映された。
 LST-G(顆粒均一型)は拡大観察で特異な変化を認めなければほぼ腺腫か粘膜内癌であることが報告されており、今回の検討結果も同様であった。しかし、EPMRでは標本の再構築が難しくなる例や局所再発例が一部で認められた。
 治療技術の進歩とともに対象となる病変の正確な病態をとらえ、総合的に適切な治療方針を検討することが重要であると考えた。
索引用語 直腸ESD, SBナイフJrタイプ