セッション情報 パネルディスカッション21(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器癌の悪性度・予後における分子診断

タイトル 外PD21-1:

cDNAバンクを用いた消化器癌の転移および予後予測因子の検索

演者 大島 貴(横浜市立大市民総合医療センター・消化器病センター)
共同演者 國崎 主税(横浜市立大市民総合医療センター・消化器病センター), 今田 敏夫(横浜市立大・外科治療学)
抄録 【目的】外科学教室は,手術によって多くの臨床検体とそれに対応する臨床病理学的データを得られるという点で,研究における大きなadvantageを有しているが,臨床に多くの時間を要することから研究時間を十分に確保出来ていないのが現状である。そこで,当教室ではこのadvantageを生かしながら,効率的に有用なデータを得る方法としてcDNAのバンク化をすすめ,消化器癌の予測因子を検索してきた。これまでに得られた成果を報告する。【方法】2002年4月から2010年12月までに本研究への参加に同意し,臨床検体を提供された胃癌416例,大腸癌572例のうち,5年以上経過した大腸癌202例, 胃癌226例を対象とした。臨床検体より得られた癌組織および近接正常粘膜は,直ちにO・C・T compoundに包埋・凍結した。次にH.E.染色を行い,癌細胞の含有量が80%以上認める標本を癌組織と定義し,癌組織および近接正常粘膜からmRNAの抽出し,RT反応にてcDNAを作成しバンク化した。これを用い定量 PCR法にて癌組織と正常粘膜における82遺伝子の相対的発現量を測定し,各臨床病理組織学的因子および治療成績との関係について検討した。【結果】大腸癌ではMMP-2, MMP-13, IGF-1R, FGF-R1, claudin-7, EphA4, EphB2, Period1, Bmal1, RegIVの発現と肝転移との間に有意な関係が認められた。またMT1-MMP, TIMP-1, STC1, STC2, CCR-7, Period2, IL-24, RegIV, Bcl-2, PRL-3, IGF-BP3は独立した治療成績の規定因子であった。胃癌では現在測定を進めているが,これまでに5遺伝子が独立した治療成績の規定因子であった。【結論】cDNAバンクを用いた消化器癌の転移および予測因子の検索により,上記10遺伝子が大腸癌肝転移の予測因子として,11遺伝子が大腸癌の予後予測因子として,5遺伝子が胃癌の予後予測因子として,その有用性が示唆された。
索引用語 消化器癌, 予測因子