セッション情報 パネルディスカッション21(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器癌の悪性度・予後における分子診断

タイトル 消PD21-3:

胃腫瘍性病変におけるマイクロRNA発現プロファイルの有用性

演者 斎藤 義正(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者 鈴木 秀和(慶應義塾大・消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 【目的】
マイクロRNAは21-25塩基程度の低分子RNAであり、複数の標的遺伝子を抑制し、がんなどの疾患に重要な役割を果たしている。また、マイクロRNAの発現プロファイルが腫瘍の性質やがん患者の予後などと深い相関を示すことが報告されている。本研究では胃腫瘍性病変におけるマイクロRNAの発現プロファイルを網羅的に解析し、新たな分子診断および分子標的治療の開発を目指すことを目的とした。
【方法】
胃腫瘍性病変(胃腺腫8例、早期胃がん22例、進行胃がん23例、胃MALTリンパ腫15例)の患者より充分なインフォームド・コンセントを得て病変組織ならびに正常粘膜組織を採取し、マイクロRNAの発現変化をマイクロアレイおよび定量的PT-PCRによって網羅的に解析した。有意な発現変化のみられたマイクロRNAについては臨床情報との相関を解析した。
【成績】
胃腺腫および胃がんにおいてmiR-29cの発現低下を認め、miR-29cの発現低下は進行胃がんにおいてより顕著であった。さらにmiR-29cの標的遺伝子の一つであるMcl-1の発現が進行胃がんにおいて上昇しており、miR-29cの発現低下がMcl-1を活性化して胃発がんに重要な役割を果たしていることが考えられた。一方、胃MALTリンパ腫に関しては、API2-MALT1キメラ遺伝子を伴いH. pylori除菌治療に抵抗性の胃MALTリンパ腫においてmiR-142およびmiR-155の発現が著明に上昇していた。また、リツキサンなどによる除菌抵抗性胃MALTリンパ腫に対する治療への反応性とmiR-142およびmiR-155の発現に有意な相関を認めた。
【結論】
胃腫瘍性病変におけるマイクロRNA発現プロファイルが組織所見や治療に対する反応性と有意に相関しており、診断や予後の評価に有効であることが示された。マイクロRNAが胃腫瘍性病変の新たな分子マーカーおよび治療標的となることが期待される。
索引用語 マイクロRNA, 胃腫瘍性病変