抄録 |
胆嚢炎に併発し門脈、肝静脈と交通したBilomaの1例新潟こばり病院 消化器内科 ○高橋澄雄、早川晃史症例は68歳男性。52歳時に外傷性腰椎圧迫骨折の既往がある。平成14年4月より脳梗塞にて当院入院中であった。5月初旬より発熱出現、血液検査にてWBC 13500/mm3、CRP 15.1mg/dlと炎症所見、およびGOT 70 IU/l、GPT 167IU/l、ALP 783IU/l、γGTP 160IU/l、と肝胆道系酵素の上昇を認めたため5月14日腹部超音波施行、S8に径8cm、周囲にring状低エコー域を伴う嚢胞性病変認めた。CTでは辺縁が造影される不整形嚢胞像、MRIでは腹側にT1 low、T2 high、背側にT1 high、T2 lowの鏡面像を伴う嚢胞性病変として認められた。臨床経過および画像所見から肝膿瘍を疑い、抗生剤投与しながら脳梗塞に対して投与されていた抗血小板薬の効果が消失するのを待ちドレナージを行う方針とした。5月22日経皮経肝的ドレナージ施行したところ、内容物は黄褐色漿液性の胆汁成分でありBilomaと診断された。内容液の培養では細菌は検出されず、細胞診はClass IIであった。発熱、炎症所見が改善した後行った6月4日のドレナージ造影では、Biloma内腔および内腔と交通する門脈、肝静脈、胆管が描出され、造影後内容液を吸引すると新鮮血が吸引された。造影剤の注入圧によりBilomaの壁が破れ、血管系との交通が生じたものと考えられた。交通路の自然閉鎖を期待し、抗生剤および止血剤の投与を行い経過観察としたところ、造影後一過性の発熱を認めたのみでドレーンからの出血は数日で消失、その後胆汁流出も徐々に減少し、ドレーンを 挿入50日後に抜去した。発症6ヶ月後のCTでBilomaは消失しており、現在まで再発を認めていない。本例は発症時胆嚢の腫大、胆石が認められ、胆嚢に近接した場所に発生したことから、急性胆嚢炎が誘因となった特発性Bilomaと考えられた。Bilomaは繊維化組織により被包化された胆道系外胆汁貯留と定義され、内容液の性状は漿液性、血性、膿性など多様性に富んでいる。本例は膿瘍的な性質がつよい感染性Bilomaが門脈や肝静脈と交通したものと考えられ、興味深い症例と思われたので若干の文献的考察を交えて報告する。 |