セッション情報 パネルディスカッション21(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器癌の悪性度・予後における分子診断

タイトル 外PD21-8:

幹細胞性GSEA/パスウェイ解析に基づいた肝癌臨床への展開

演者 田中 真二(東京医歯大・肝胆膵・総合外科)
共同演者 茂櫛 薫(東京医歯大・情報医科学センター), 有井 滋樹(東京医歯大・肝胆膵・総合外科)
抄録 【目的】難治性癌と幹細胞性の関連が報告されているが、肝癌における臨床的意義や生物学的機能には不明な点が多い。我々は幹細胞遺伝子特性のgene set enrichment analysis (GSEA)法により肝癌臨床症例を解析し、さらに幹細胞性機能に基づいたネットワーク・パスウェイ解析により、臨床診断・治療標的を示唆する知見を得たので報告する(JACS 2009, Surgery 2010, Ann Surg 2011)。【方法】肝癌手術症例に対して、Weinbergらのembryonic stem (ES) 遺伝子特性を用いたDNA microarray-GSEA解析を行なった(Nat Genet 2009)。次に、幹細胞の機能的特性に基づいて肝癌細胞のGSEA解析を進め、臨床検体のパスウェイ解析へ展開した。【結果】肝癌の早期再発症例におけるGSEA解析では、ES 遺伝子特性 ES exp1(380)およびES exp2(40)の発現と有意な相関を認めた(NES>1.7)。多変量解析により、肝幹細胞蛋白の発現が、肝癌悪性度を示す独立規定因子であることを見出した。さらに、幹細胞特性の機能マーカーに基づいてソーティングした肝癌細胞は、極めて高い造腫瘍性を呈し、GSEA法によって上皮-間葉転換(epithelial-mesenchymal transition; EMT) ネットワークとの高度な相関が明らかとなった(NES>2.0)。臨床検体の解析でも、EMTパスウェイの特異的亢進が難治性肝癌の予測因子となることが示された。 【結語】肝癌手術症例を用いたGSEA解析により、ES遺伝子特性が再発に関与することを明らかとした。さらに幹細胞性機能を示す肝癌はEMTネットワークと高度に相関し、治療標的となる特異的パスウェイの存在が示唆された。
索引用語 肝癌, GSEA