セッション情報 |
パネルディスカッション21(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)
消化器癌の悪性度・予後における分子診断
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タイトル |
消PD21-9:肝癌の発生・進展を規定するゲノム異常の次世代シーケンサー解析
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演者 |
池田 敦之(京都大大学院・消化器内科学) |
共同演者 |
丸澤 宏之(京都大大学院・消化器内科学), 千葉 勉(京都大大学院・消化器内科学) |
抄録 |
【目的】ヒト肝癌の特徴として、発生母地となる背景病変からの発癌リスクが極めて高いことがあげられる。実際に、本邦における肝癌の大部分は、肝炎ウイルス感染による慢性肝疾患を背景に発生することが知られている。一方、肝癌組織においては、高分化型腫瘍の内部に低分化の腫瘍細胞が出現することはよく経験され、肝癌の発生から進展、悪性度の増大に伴い、様々なゲノム・エピゲノム異常が多段階的に生じているものと推定される。本研究は、肝炎ウイルス感染からの肝癌の発生・進展を規定するゲノム異常を探索することを目的とする。【方法】HCV感染に起因する肝硬変12症例において、肝癌発生例並びに非発癌例の癌組織、非癌部肝硬変組織からDNAを抽出し、p53などの既知の発癌関連遺伝子におけるゲノム異常を、Multiplex法を用いた次世代シーケンサーによる大規模多クローン解析を行った。また、肝癌の単発例並びに多発例において、癌組織、非癌部肝硬変組織から抽出したDNAを用い、全遺伝子のexon領域を選択的に抽出するExon captureを実施した。引き続き、全exon領域を次世代シーケンサーにより大規模exome sequenceを行い、ゲノム異常の網羅的解析を行った。【成績】HCV陽性の非癌部肝硬変組織では、非発癌例においても発癌関連遺伝子に高頻度のゲノム異常が蓄積していることが確認された。また、すでに発癌している例においてはより高頻度であった。中でもp53遺伝子は、非癌部肝硬変組織において0.03から144塩基/104塩基という高頻度で変異が潜在していた。また、exome sequence解析結果からは、様々なタンパクをコードするexon領域にclonal並びにnon-clonalに多様な遺伝子変異が蓄積していることがわかった。【結論】肝癌の発生・進展過程において、癌細胞の発生に関与する可能性のあるゲノム変化がHCV感染を伴った肝硬変組織に早期から生じていること、発癌後はさらに癌細胞内に多様なゲノム異常が多段階的に蓄積することが、癌の進展、悪性度を規定する要因となっている可能性が示唆された。 |
索引用語 |
肝癌, 次世代シーケンサー |