セッション情報 パネルディスカッション21(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器癌の悪性度・予後における分子診断

タイトル 外PD21-10:

肝癌症例における末梢血および組織中のmicroRNAの意義

演者 江口 英利(大阪大・消化器外科)
共同演者 土岐 祐一郎(大阪大・消化器外科), 森 正樹(大阪大・消化器外科)
抄録 【背景】近年、癌組織と非癌組織でのmicroRNA(miR)の発現差が発癌、癌の進展、悪性度に関わることが明らかになってきている。さらに癌組織中のmiRは末梢血中に放出されCirculating miRとして検出可能なため、腫瘍マーカーとして利用できる可能性が示唆されている。各種miRの中でもmiR-21は多種の癌組織で発現上昇が報告されており、悪性度診断や存在診断に利用できる可能性がある。
【目的】肝細胞癌症例において、原発巣および末梢血中のmiR-21の発現量を測定しその臨床的意義を検討する。また肝癌細胞株にmiR-21を強制発現/発現抑制することにより薬剤耐性が変化するかどうかを検討する。
【方法】肝細胞癌根治切除症例(10例)の術前、術後の血漿中のRNAを抽出し、qRT-PCR法にてmiR-21を測定した。次に126例の肝細胞癌症例の術前末梢血および切除標本の原発巣よりRNAを抽出しmiR-21を測定した。対照群として慢性肝炎症例(CH;30例)、健常人(HV;50例)も測定し、担癌患者を識別可能かどうか検討した。次に肝細胞癌株(PLC/PRF/5、HepG2)にpre-miR-21およびanti-miR-21を遺伝子導入し、miR-21の発現量と抗癌剤耐性の関連を検討した。
【結果】根治切除例では、切除により末梢血中のmiR-21は著明に低下していた(p=0.0125)。また原発巣と末梢血中のmiR-21は有意に相関していた(r=0.407、p<0.0001)。特に脈管侵襲のない単発症例(75例)ではさらに強い相関を認めた(r=0.589、p<0.0001)。腫瘍マーカーとしてのmiR-21の意義については、HCC群とCH群の比較では感度が61.1%、特異度が86.7%で、HCC群とHV群の比較では感度が87.3%、特異度が96.0%であり、その識別能はAFPより優れていた。細胞株にmir-21を強制発現させると5FUやIFNに対する耐性が上昇し、発現抑制により感受性が上昇した。
【まとめ】肝細胞癌症例における末梢血中のmiR-21は癌の存在診断に有用である可能性が示唆され、また生物学的には薬剤耐性に関与する可能性が示唆された。
索引用語 microRNA, 肝癌