セッション情報 パネルディスカッション21(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器癌の悪性度・予後における分子診断

タイトル 消PD21-11:

膵癌特異的なマイクロRNA発現プロファイル解析からの悪性化因子の同定

演者 濱田 晋(東北大・消化器内科)
共同演者 佐藤 賢一(東北大・消化器内科DELIMITER宮城県立がんセンター・臨床研究室), 下瀬川 徹(東北大・消化器内科)
抄録 【目的】膵癌は浸潤傾向が強く非常に予後の悪い癌である。一方、膵管内乳頭状粘液腫瘍(IPMN)は同じく膵管を発生母地としながら浸潤傾向が低く予後が良い。そこで、膵癌とIPMNのマイクロRNA発現プロファイルを比較することにより、膵癌の悪性度を規定する因子を同定することを目的とした。【方法】IPMA6例、IPMC6例、浸潤性膵癌5例よりマイクロダイゼクションにて採集した腫瘍腺管と、ヒト膵癌細胞株5種よりtotal RNAを抽出し、Agilent社のマイクロRNAアレイを用いて発現プロファイルを比較した。クラスター解析により有意な発現変動を示したマイクロRNAを同定した。膵癌および膵癌細胞株で有意な発現低下が確認されたものについては、膵癌細胞株における強制発現実験を行い、細胞遊走能と浸潤能の変化を検討した。【結果】膵癌組織およびヒト膵癌細胞株においては既報にて膵癌での高発現が報告されているmiR-21の発現上昇に加えmiR-126の有意な発現低下が確認された。miR-126を膵癌細胞株Panc-1およびASPC-1に強制発現させると細胞遊走能・浸潤能の抑制が確認された。さらに膵癌のEMT誘導因子であるMSX2の発現を抑制し、浸潤能が低下したPanc-1ではmiR-126の発現上昇が認められた。データベース解析により、miR-126の標的遺伝子としてCRK (v-crk sarcoma virus CT10 oncogene homolog)やアミノ酸トランスポーターであるSLC7A5、細胞接着に関わるADAM9が同定された。ADAM9はmiR-126の強制発現によりその発現が低下し、MSX2ノックダウン細胞株での発現低下も確認された。【結論】IPMNと比べ膵癌で特異的に発現低下の認められたマイクロRNAとしてmiR-126を同定した。miR-126の発現低下は膵癌の浸潤能と関連しており、膵癌悪性度の指標となる可能性が示唆された。
索引用語 膵癌, マイクロRNA