セッション情報 パネルディスカッション22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

上部消化管出血に対する緊急内視鏡の現状

タイトル 内PD22-1:

当院における上部消化管出血に対する緊急内視鏡検査とGlasgow-Blatchford scoreの関係

演者 進士 明宏(諏訪赤十字病院・消化器科)
共同演者 武川 建二(諏訪赤十字病院・消化器科), 太田 裕志(諏訪赤十字病院・消化器科)
抄録 当院では、24時間体制で、消化管出血に対する緊急内視鏡検査に対応し、疑いがあれば、積極的に緊急対応している。時間外については、マンパワーの問題から、内視鏡医1名と看護師1名の体制である。制酸剤の静脈内投与を先行させ、救急救命センター内から内視鏡室に移動し、バイタルサインが安定している場合には鎮静剤を用いて行っている。止血法はクリップ、熱凝固止血、エタノールの局注、静脈瘤であれば、EVL/EISを適宜術者の判断で選択している。止血症例は、2nd lookの内視鏡検査で止血確認の上、経口摂取を再開する方針としている。今回、2006年11月~2011年1月までに上部消化管出血が疑われ緊急上部消化管内視鏡検査を行った411例に対して、内視鏡所見を含まないスコアリングシステムであるGlasgow-Blatchford Scoreを用いて止血処置必要例を選別できるかレトロスペクティブな検討を行った。平均年齢68.8歳、男性264例、女性147例、逆流性食道炎65例、胃潰瘍167例、十二指腸潰瘍60例、静脈瘤34例、その他85例で、NSAID内服例79例、抗血小板剤・抗凝固剤内服例40例、重複内服例があり、総数109例であった。Forrest分類でI~2a(露出血管あり)までを止血対象とし、それ以外は止血不要とした。内視鏡観察して止血処置を要した症例が271例、不要だった症例は140例であった。GBSスコアは、止血処置群では中央値13、範囲3~20、不要群では中央値8, 範囲4~19であり、両群は、Man-Whitney検定では、P<0.0001と有意差を認めたが、スコアが高い止血不要例、スコアが低い止血必要例も見られた。スコア12点以上、未満でわけると、感度は 183/271 = 67.5%, 特異度は 99/140= 70.7%であった。GBSスコアは上部消化管出血のリスク評価に役立つが、現状では、内視鏡的止血の要不要をこれのみで決定することはできないと考えられ、より感度、特異度の高いスコアリングシステムの構築が必要と考えられた。なお、NSAIDs等薬剤内服例は止血処置群72例、不要群37例で、オッズ比は1.0であった。
索引用語 緊急内視鏡, Glasgow-Blatchford score