セッション情報 パネルディスカッション22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

上部消化管出血に対する緊急内視鏡の現状

タイトル 消PD22-2追1:

3次救命救急センターにおける上部消化管緊急内視鏡診療の現況

演者 春田 純一(名古屋第一赤十字病院・消化器内科)
共同演者 山口 丈夫(名古屋第一赤十字病院・消化器内科), 石川 卓哉(名古屋第一赤十字病院・消化器内科)
抄録 平成15年5月1日、当院は愛知県で9番目の救命救急センターとして指定され、第3次救急医療を担当している。平成10年から22年までの上部消化管緊急内視鏡症例総数は7270例(男性5031例、女性2239例、平均年齢66.5歳)、活動性出血に対する止血処置施行例は1020例であった。救命救急センター指定に伴い、消化器疾患の救急搬入も増加の一途をたどり、平成22年の上部消化管緊急内視鏡総数は上部で844件、止血件数は146件に及ぶ。緊急内視鏡に対応するため、平日時間外、および休日は基本的に2名の救急当番を置き、24時間緊急内視鏡に対応できる体制を取っている。上部消化管疾患としては潰瘍出血、静脈瘤の破裂、異物除去などに対応する。消化管出血に対する止血方法は、クリップを主体に、HSEと凝固を病変の部位、出血の状況に合わせ随時組み合わせて行う。10年間で外科手術に移行したものは5例に過ぎず、ほぼ99%で内視鏡的止血が成功している。緊急内視鏡時には術者を含め最低2名のドクタースタッフと、患者の病態を観察し、記録を担当する看護師1名、研修医、レジデントが協力して診療にあたる。内視鏡施行時には必要があれば酸素の吸入を行い、生体監視モニターにより、随時血圧、心拍、酸素飽和度をチェックし、安全に処置が施行できるようにしている。基本的には鎮静剤は使用せず、原則翌日には2nd lookを行い、止血が確認された段階で食事、内服を開始する。消化管出血が疑われた段階からPPI静注を行う。基礎疾患、内服歴を確認し、特に抗凝固薬、抗血小板薬の再開については、当該科の医師とも相談の上、速やかに決定する。外科との連携を緊密にし、保存的な処置が困難な場合は即応できる体制を整えている。医療安全マニュアルを順守し、万一偶発症が発生した場合は事態に対して迅速に対応し、関係部署に速やかに連絡できる体制を取っている。救急医療を取り巻く厳しい状況を認識し、正確で安全な治療を行い、アクシデントにも十分な備えを持って臨むことが理想であり、目標とするところである。
索引用語 上部消化管, 緊急内視鏡