セッション情報 パネルディスカッション22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

上部消化管出血に対する緊急内視鏡の現状

タイトル 消PD22-3:

CT検査は上部消化管出血に対する緊急内視鏡前検査として有効か

演者 宮岡 洋一(島根県立中央病院・内視鏡科)
共同演者 藤代 浩史(島根県立中央病院・内視鏡科), 今岡 友紀(島根県立中央病院・消化器科)
抄録 【目的】消化管出血症例では迅速な出血源の同定が必要である。当院では緊急内視鏡前に積極的にCT検査を施行するようにしており、今回、その有効性について検討した。【対象】2007年1月から2010年12月の4年間に上部消化管出血に対して施行した緊急内視鏡症例577例(非静脈瘤出血(以下A群)514例、静脈瘤出血(以下B群)63例)。CT施行数は造影、単純の順でA群207例、94例、B群28例、13例。なお、CTは東芝メディカルシステムズAquilion64を使用した。【検討項目】1)CTによる出血源診断、2)CTがIVR治療選択に貢献できた例、3)造影CTでの副作用出現の有無、4)CT有無別での内視鏡による出血源同定平均時間の比較。【結果】1)出血源診断可能であったものは造影、単純の順にA群113例(54.9%)、17例(18.1%)、B群27例(96.4%)、0例(0%)と造影CTで有意に高かった。また、出血源診断には至らなかったが、胃内凝血塊有無の同定が可能であった例が造影、単純の順にA群44例(21.3%)、35例(19.6%)、B群0例(0%)、6例(46.2%)存在し、内視鏡やデバイス選択に貢献した。2)13例(胃潰瘍5例、十二指腸潰瘍1例、十二指腸憩室出血2例、胃静脈瘤5例、)でCT所見にて事前に内視鏡止血困難が予想され、早急なIVR選択に貢献できた。3)副作用出現例はみられなかった。4)CTによる出血源診断可能例では造影、単純の順でA群125.99秒、138.65秒、B群88.88秒、該当例なし、CT未施行例ではA群174.85秒、B群207.5秒であり、CT施行例(特に造影)で内視鏡出血源同定時間が有意に早かった。【考察】緊急内視鏡前CT(特に造影)は、事前の出血源の同定、治療戦略の決定に有効であることが示唆された。また、今回の検討対象外ではあるが、造影CTにて食道大動脈瘻が診断でき、内視鏡検査を回避できた例もあった。さらにCT所見から緊急内視鏡が必要か否かを区別できる可能性もある。これらは、内視鏡医にとって緊急内視鏡時の精神的負担の改善にも役立つと考えられる。
索引用語 消化管出血, CT