セッション情報 パネルディスカッション22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

上部消化管出血に対する緊急内視鏡の現状

タイトル 消PD22-5:

食道胃静脈瘤出血に対する内視鏡的硬化療法(EIS)‐A prospective 29-year study

演者 岩瀬 弘明(国立名古屋医療センター・消化器科)
共同演者 島田 昌明(国立名古屋医療センター・消化器科), 都築 智之(国立名古屋医療センター・消化器科)
抄録 【目的】 29年間の食道胃静脈瘤出血に対するEISの成績から標準治療としての位置づけを検討した。【方法】予後を含め十分な治療結果が記録されている出血治療424例を対象とした。基礎的検討から1982年より硬化剤と造影剤を混合して、静脈瘤から固有供血路まで注入する透視下EISを治療の原則とした。孤立性胃静脈瘤に対しては1992年からヒストアクリルを導入した。2000年からは夜間休日、活動性出血時また肝硬変終末期の症例は内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を治療の第一選択とした。【成績】1)食道静脈瘤出血345例と孤立性胃静脈瘤出血治療79例の止血率はそれぞれ96%、95%であった。2)EVLは簡便であり侵襲も少なく、緊急時、終末期患者の一時止血には適切な治療法であった。EVL導入により、緊急時の重篤な合併症が7%から1%以下に減少した。EVL単独治療の再発率は86%であった。3)著明な血小板減少を伴う巨脾症例、また広範囲に発達する胃静脈瘤は完全止血困難例があり、脾摘または血行遮断術兼脾摘術を追加した。4)食道および胃静脈瘤出血EIS治療例の10年生存率はそれぞれ7%、24%、20年生存率は4%、0%であった。死因は肝不全51%、 肝癌23%、他病死13%、静脈瘤出血死7%、治療関連死4%であった。4)単および多変量解析の結果、予後因子は悪性腫瘍の合併、肝予備能、特に凝固系因子、アルブミン値、血小板数であり、静脈瘤の形態、治療時期(予防的治療含む)、門亢症の原因は重要な因子ではなかった。【結論】1)食道胃静脈瘤出血に対しては透視下EISは止血効果、予後、合併症からみて治療標準に適切と考えられた。2)EVLは緊急時また終末期患者の止血法としては有効だが、長期間の再出血予防にはEIS併用が必要である。3)巨大脾腫例、完全消失できない広範囲胃静脈瘤は外科的追加手術が有効であった。4)EIS例の予後改善には肝癌の早期発見、治療、また肝予備能の対策(IFN治療、栄養および生活指導等)、血小板数の増加が重要と考えられた。
索引用語 食道胃静脈瘤出血, 内視鏡的硬化療法