セッション情報 パネルディスカッション22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

上部消化管出血に対する緊急内視鏡の現状

タイトル 内PD22-11:

出血性胃潰瘍におけるセカンドルック内視鏡の実施状況と拡大潰瘍の位置付け

演者 小山 茂(都立広尾病院・消化器内科)
共同演者 秋山 智之(都立広尾病院・消化器内科), 藤澤 信隆(都立広尾病院・消化器内科)
抄録 【目的】出血性胃潰瘍に対する内視鏡的止血術については一定の見解が得られているが, セカンドルック内視鏡の適応や局注法で生じる拡大潰瘍の意義については未だ確定的ではない. 当院での経験症例を元に検討した. 【方法】2005年から2009年まで5年間に当院で治療した出血性胃潰瘍入院症例204例を対象に, 初回検査から24時間以内に行ったセカンドルック内視鏡の実施状況と内容を検討し解析を行った. 局注後に拡大潰瘍を形成した例(拡大例)と形成しなかった例(非拡大例)について, 初回検査時の出血像や部位, 止血術の内容, 輸血量や入院日数などを比較した.【成績】204例は平均年齢66歳で男性156例・女性48例だった. 176例(86%)にエタノール局注とクリップを中心とした内視鏡的止血術を施行した. セカンドルック内視鏡は175例(86%)に実施した. セカンドルック時に追加止血を施行した44例と施行しなかった131例とを比較したところ, 初回出血像Forrest IaとIIIが非施行例に多い傾向だった他は, バイタルサインや血液検査結果, 初回止血内容に有意差を認めなかった. 再出血は7例(3.4%)で, 初回検査から3‐12日後(平均6.8日)に発生した. 2日目再検1例のほか6例にセカンドルックを実施していたが, 4例が観察のみで2例がクリップ単独の追加止血を施行されていた. 内視鏡止血不能例はIVRの治療となった2例(1.0%)のみだった. 拡大例は48例で初回止血後43例(初回止血例の24%), 追加止血後5例だった. 拡大潰瘍形成後に再出血した例は皆無だった. 拡大例と非拡大例を比較したところ, エタノール局注の量と回数が拡大例に有意に多く(1.6ml>1.3ml, 6.1回>5.0回)体部潰瘍に拡大例が多い傾向を認めたが, 出血像や輸血量, 入院日数に差はなかった.【考察】セカンドルック検査の徹底と積極的な追加止血が高い止血率と低い再出血率に結びついていたが, 追加止血の要否を事前に予測する事は困難と考えられた. 拡大潰瘍は有害な偶発症とは言えず, むしろ確実な止血の指標と考えてよいと思われた.
索引用語 セカンドルック, 拡大潰瘍