セッション情報 パネルディスカッション22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

上部消化管出血に対する緊急内視鏡の現状

タイトル 内PD22-13追5:

低用量アスピリン起因性出血性胃十二指腸潰瘍における内視鏡的止血術の現状

演者 白石 慶(社会保険小倉記念病院・消化器科)
共同演者 藤本 憲史(社会保険小倉記念病院・消化器科), 吉田 智治(社会保険小倉記念病院・消化器科)
抄録 【目的】低用量アスピリン服用中に発症した出血性胃十二指腸潰瘍に対する内視鏡的止血術の現状から,問題点及びその対策を検討する.【方法】当院では,消化管出血は常時消化器内科医が対応する.止血術はクリッピング,バンド結紮,HSE局注,ソフト凝固,APCを術者の判断のもと単独または併用で行う.止血術後は絶食,PPIの静注,2日以内に止血確認(2nd look)の後,食事再開としPPIの内服に切り替える.アスピリンは可能であれば,止血が確認されるまで休薬する.薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent: DES)留置例では原則,アスピリンは止血術周期も休薬しないこととしている.対象は,過去7年間に当院で内視鏡的止血術(薬剤散布法のみの症例は除外)を施行した連続する474例の出血性胃十二指腸潰瘍のうち,発症時にアスピリンを服用していた209例である.それらの症例背景,内視鏡所見,止血術,転帰につきretrospectiveに解析した.【成績】全例脳心血管疾患を有し,79例は基礎疾患で入院中に発症した.30例は多発していた.多くの症例は一回で止血可能であったが,35例では複数回の止血術を要した.中でも,複数回の止血術を要したDES留置例では抗血小板薬の取り扱いに苦慮した.また6例においては,出血に伴いアスピリンなどの抗血栓薬を休薬中(投与中止5~60日目)に血栓塞栓症を合併した.そして,22例(10.5%)は死亡退院した.うち7例は内視鏡的に止血不能で,一方15例では内視鏡的に止血し得たが,出血を契機に基礎疾患の悪化,感染症や血栓塞栓症の合併などにより死亡に至った.【結論】低用量アスピリン服用中に発症した出血性胃十二指腸潰瘍では,各診療科が連携を取りつつ,出血予防はもちろんのこと,迅速かつ確実な止血,適切な抗血小板薬の取り扱いと出血後の全身管理が必須である.特に,止血達成後は血栓塞栓症の予防のために,早急に抗血栓薬を再開すべきである.
索引用語 出血性胃十二指腸潰瘍, 低用量アスピリン