セッション情報 パネルディスカッション22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

上部消化管出血に対する緊急内視鏡の現状

タイトル 内PD22-14追6:

上部内視鏡検査における生検後出血の検討

演者 菅沼 孝紀(癌研有明病院・消化器センター)
共同演者 平澤 俊明(癌研有明病院・消化器センター), 藤崎 順子(癌研有明病院・消化器センター)
抄録 【目的】画像強調内視鏡、拡大内視鏡の発達により視覚生検(optical biopsy)の可能性の是非が議論されているが、golden standardは組織生検による病理診断である。生検の稀な合併症として出血があるが、その詳細な検討は少ない。【方法】当院の消化器センター、健診センターの内視鏡室にて2008年5月~2010年12月の間に通常上部内視鏡検査を施行した39295例中、生検実施例は、23899例(生検率 60.8%)であった。その内、生検後出血をきたした7例(男性4例、女性3例)(生検後出血率 0.029%)を対象とした。生検後出血の定義として生検後1週間以内に消化管出血が疑われ緊急内視鏡検査を施行し、生検部位からの出血が確認された場合を生検後出血とした。【成績】対象の平均年齢は65.7歳(46~80歳)、通常胃5例、術後胃(幽門側胃切除)2例であった。背景粘膜は、萎縮粘膜が6例、非萎縮粘膜1例であった。出血生検部位は、U領域小彎2例、M領域小彎4例、胃空腸吻合部後壁1例であった。緊急内視鏡に至る症状としては、下血5例、吐血2例で、5例で24時間以内に黒色便の症状を認めた。緊急内視鏡までの時間は、9~47時間(平均21.6時間)であった。抗凝固薬の内服は、2例(1例、クロピドグレル休薬3日、1例、イコサペント酸エチル内服中)であった。全例でクリップによる止血が可能で再出血は認めなかった。出血生検部位の病理結果は、adenocarcinoma 2例、MALT lymphoma 1例、angioectasia 1例、gastritis3例であった。入院例は、5例(入院平均4.6日)で、生検後のHb値低下は平均1.85g/dl(0.2~3.7g/dl)であり、1例で輸血を要したが、全例で貧血改善し退院となった。【結論】通常上部内視鏡検査における生検後出血の割合は、0.029%と低頻度であったが、5例で入院を要した。出血部位は、萎縮粘膜の小彎側が多く、7例中2例で抗凝固薬の内服症例を認めた。
索引用語 生検後出血, 抗凝固薬