セッション情報 パネルディスカッション22(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

上部消化管出血に対する緊急内視鏡の現状

タイトル 内PD22-15:

緊急内視鏡か、2nd look内視鏡か? ~胃ESD後出血に関する多施設調査~

演者 後藤 修(慶應義塾大・腫瘍センター)
共同演者 小田島 慎也(東京大・消化器内科), 小池 和彦(東京大・消化器内科)
抄録 【目的】胃ESD後の緊急内視鏡を回避する手段の一つとして計画的な術後内視鏡(2nd look内視鏡)の施行が挙げられるが、有用性を示すエビデンスはない。今回我々は後出血対策についての多施設調査を行い、2nd look内視鏡が緊急内視鏡を回避できるか否かを検討した。
【方法】都内中心の計10施設で2009年に施行した胃ESD1814例を対象とし、緊急内視鏡の適応および後出血対策(制酸剤、食事開始時期、2nd look内視鏡の有無)の現状を把握した上で、2nd look内視鏡の後出血低減効果を解析した。後出血は、緊急内視鏡時に胃内血液の貯留または粘膜欠損部からの出血を認めた場合とした。
【結果】施設ごとの症例数中央値は113(33-411)例、後出血率中央値は4.3(0-11.3)%であった。後出血は全体で100例(5.5%、うち2nd look内視鏡時1例)に認め、62例が術後1日以内の2nd look内視鏡前に生じていた。緊急内視鏡の適応は「明らかな吐下血」のみが1施設、「明らかな吐下血」に加え「2g/dL以上のHb低下」もしくは「vital signの変化」を認めた場合が6施設、3条件とも認めた場合が3施設であった。全施設で周術期にPPIを使用していたが期間は多様 (2/4/8週間: 1/3/6施設)、食事開始は術後1/2日目: 4/6施設、2nd look内視鏡はほぼ全例(90-100%)/少数例(10-50%)/基本的に施行せず(0-10%): 6/2/2施設との結果であった。2nd look内視鏡の頻度(半数以上もしくは以下の2群)別の後出血率は全体: 術後1日以降で5.5/5.5%: 1.6/2.7%で、両群に有意差を認めなかった。
【結論】今回の解析では2nd look内視鏡による緊急内視鏡の回避は困難と考えられた。5%程度の後出血率を許容すれば、周術期のPPI使用、翌日以降の食事開始、適切なタイミングでの緊急内視鏡の施行により2nd look内視鏡は省略可能と思われる。
索引用語 後出血, 2nd look内視鏡