抄録 |
【目的】ESD適応拡大病変[2cm<,UL(+)]は後出血の高危険群(後出血率 12.5%)である.後出血は露出血管の凝固やPPI投与で減少するが,それにもかかわらず吐下血で緊急止血を要する例を経験する.内視鏡的ドプラ超音波プローブ(DOP-US)は先端の血流シグナルを音に変換し聴取する器械で,出血性胃潰瘍の再出血予測に対する有用性が示唆されている.本装置がESD後の出血を予防可能か検討した.【方法】ESD適応拡大病変70例に対してESD直後の潰瘍底を観察しながらDOP-USで探触,内視鏡所見とDOP-US所見を記録した.陽性シグナル[DOP(+)]は深度1.5mmの拍動波と定義した.活動性出血とDOP(+)部位はシグナル陰性[DOP(-)]になるまでsoft凝固し,DOP(-)部位は無処置で経過観察した.ESD後のセカンドルックは行なわず,30日以内の後出血を評価した.後出血は吐下血またはHb 2g/dl以上の低下と定義した.【成績】滲出性出血を32ヶ所[うちDOP(+)12か所]認め,凝固止血を施行.露出血管を763ヶ所認め,うちDOP(+)の147ヶ所(19%)と探触中に活動性出血を認めた4ヶ所を凝固し,残りの612ヶ所は無処置で経過観察した.血餅付着を18ヶ所認めたが,全てDOP(-)のため経過観察した.内視鏡所見のない63ヶ所にDOP(+)を認め,59ヶ所を凝固した.後出血は6例(8.6%)認めた.3例はDOP(+)の露出血管に止血処置(soft凝固2例,soft凝固+clip1例)を行なったが,後出血を認めた.1例は深度4mm,7mmでシグナルを聴取したが,1.5mmが陰性のためDOP(-)と判定し,無処置で経過観察したところ後出血を認めた.1例は内視鏡,DOP-USで所見を指摘できなかった部位に後出血を認めた.1例は85mmの病変の切除後にHb 2.4g/dlの低下があり,吐下血は無いが後出血と判定した.DOP(+)部位は処置を行なっても1.4%(3/222)に吐下血を認めたのに対し,DOP(-)部位からは無処置でも0.31%(2/650)しか認めなかった.【結論】DOP-USはESD後潰瘍からの後出血を予測できる可能性がある.さらに効果的な血流シグナルの探触法と血管の処置方法の開発が必要である. |