抄録 |
【目的】近年、高齢者特に80歳以上超高齢者の肝膵疾患切除症例が増加傾向にあり、術前合併症など臓器機能低下が予想され厳格な周術期管理が要求される。肝膵切除は手術侵襲が大きいことから通常の手術選択が適応されるか問題がある。これまでの肝膵切除症例を年齢別に解析し各種scoring systemによる評価を行った。【方法】1994~2010年の肝癌肝切除188例と膵切除147例を対象とし、年齢はAge<50群(50歳以下、n=9、15)、 Age50-69群(50-69歳, n=110、65)、Age70-79群(70-79歳, n=57、61)、Age≧80群(80歳以上, n=12、6)。臨床データーとASA score、E-PASS score(preoperative risk score;PRS,surgical stress score;SSS,comprehensive risk score;CRS) を評価した。【結果】1)肝癌肝切除;5年後とのAge70-79とAge≧80群は増加傾向にあった(p<0.01)。術前併存合併症, PS、ASA scoreは年齢とともに増加していた(p<0.05)。多結節癒合型や慢性肝炎活動性はAge70-79・Age≧80群は有意に低かった(p<0.05)。循環・呼吸器など全身合併症率はAge70-79 ・Age≧80群に多くPRSは年齢と共に増加していた (p<0.05)。多変量解析ではPRS≧0.32、70歳以上は全身合併症の独立した予後因子であった (p<0.05)。しかし術後在院期間、肝切除合併症、在院死亡など短期outcomeに各群有意差はなく、5年までの肝癌生存率にも差はなかった。2)膵切除;併存合併症、ASAは年齢とともに増加していた(p<0.05)。膵切除とリンパ節郭清範囲は各年齢群で差はなく腫瘍進行、術後経過、合併症発生率は同等であった。PRSとCRSはAge70-79,Age≧80群で増加していた(p<0.05)がSSSは同等だった。術前併存疾患有、ASA≧2、PRS≧0.32は術後合併症に有意に関連していたが、多変量解析では独立因子でなかった。【結語】術前併存疾患がありASAやPRS高値の高齢者では注意深い周術期管理が必要であるが手術内容に関しては厳密な適応決定のもと若年者同等の手術は可能と考えた。ASAやE-Passスコアは高齢者手術評価に有用な指標である。 |