セッション情報 パネルディスカッション23(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

併存疾患を有する消化器癌の治療方針と術前・術後管理における注意点

タイトル 内PD23-4:

併存疾患を有する胃腫瘍性病変に対するESDについての検討―2施設で施行した618病変の解析から―

演者 豊川 達也(国立福山医療センター・消化器科)
共同演者 藤田 勲生(国立福山医療センター・消化器科), 友田 純(国立福山医療センター・消化器科)
抄録 【目的】我が国において胃病変に対するESDは、ほぼ標準化がなされたと言っても過言ではない。しかし、併存疾患を有する症例への安全なESDについては、まだ詳細に検討されていない。今回我々は、併存疾患を有する胃病変に対するESDについて、その適応、成績、安全性などに関して検討したので報告する。【方法】対象は、2003年5月から2010年8月までに基幹病院2施設でESDが施行された胃腫瘍性病変618病変(545症例)である。これらを高血圧、脂質異常症、心疾患を有する併存有群とそれらを併存していない併存無群に層別化し、患者背景、病変の特徴、治療成績、偶発症、予後について比較検討した。なお、解析にはMann-Whitney U 検定とχ2検定を用い、p<0.05を有意差ありとした。【成績】618病変(545症例)は、併存有群が287病変(272症例)、併存無群が331病変(273症例)に層別化された。年齢は中央値で、併存有群75歳、併存無群68歳と併存有群で有意に高かった.抗凝固療法が併存有群で74例(27%)に行われており、併存無群の11例(4.0%)に比して有意に高頻度であった。病変の部位、大きさ、内視鏡形態、潰瘍瘢痕の有無、切除標本の大きさ、所要時間は両群間に有意差を認めなかった.一括切除率(93% vs 90%)、治癒切除率(83% vs 80%)は両群とも良好であり、有意差なしであったが、偶発症において、後出血の頻度が併存有群で有意に高かった(9.4% vs 5.4%)。穿孔など他の偶発症に有意差を認めなかった。残存、再発および他病死についても両群間に有意差はなかった。【結論】本研究にて、併存疾患を有している症例もそうでない症例と同様にバイアスなくESDを施行していることが判明し、治療成績も遜色なく良好な結果であった。ただし、併存疾患を有している症例は、高齢でかつ抗凝固療法を併用していることが多く、後出血の頻度が高いことも明らかとなった。今後は、高血圧、脂質異常症、心疾患を有する症例をESDする際には、後出血に十分留意し施行する必要があると考えた。
索引用語 ESD, 併存疾患