セッション情報 パネルディスカッション23(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

併存疾患を有する消化器癌の治療方針と術前・術後管理における注意点

タイトル 外PD23-5:

膵切除手術における肥満患者の術後膵液瘻リスク解析

演者 新関 亮(神戸大・肝胆膵外科)
共同演者 松本 逸平(神戸大・肝胆膵外科), 具 英成(神戸大・肝胆膵外科)
抄録 【背景】本邦では食生活の変化に伴って肥満者の割合が増加している。厚生労働省は膵・胆道癌の高リスク群である50歳以上では約3割が肥満者であると報告しており、外科手術においても肥満症例の増加が予想される。【目的】膵切除術における術後膵液瘻(以下、PF)のリスク因子として肥満の関与を検討する。【対象】2006年11月から2011年1月に施行した膵頭十二指腸切除術(以下、PD)116例、2007年3月から2010年12月に施行した膵体尾部切除術(以下、DP)50例を対象とした。【方法】内臓脂肪面積計測ソフトウェアを用いて、術前の腹部CTから皮下および腹腔内脂肪面積を計測した。これらに加えて栄養状態、黄疸、Body Mass Index(以下、BMI)などを含めた患者背景および膵硬度、膵管径、術式や手術時間、輸血・合併切除の有無、DPにおける膵切離法などの術中因子がISGPF分類でgrade B以上のPFの発生に及ぼす影響について単変量解析、多変量解析で検討した。【結果】PDではBMI≧25、そして膵癌であることがPFの独立した危険因子であった。DPではBMI≧22、そして他臓器合併切除が独立した危険因子であった。【考察】PD、DPとも肥満の指標としての皮下および腹腔内脂肪面積はPFのリスク因子とはならなかったが、高BMIが独立した危険因子であった。日本肥満学会はBMI25以上を肥満と定義しており、PDではBMI25以上のいわゆる肥満症例が術後膵液瘻の高リスク群であった。DPではBMI22以上が高リスクとなった。日本肥満学会はBMI22を標準体重としており、むしろDPではやせ型症例がPFの低リスク群であるといえた。BMIは身長、体重から算出される簡便な指標であり、PF発生の予測因子として有用であると考えられた。高BMI症例における膵切除術はPFのリスクが高いと考えるべきであり、現在は一律に論じられている膵液瘻対策やドレーンの抜去時期などを再検討する余地があると考えられた。
索引用語 肥満, 膵液瘻