セッション情報 パネルディスカッション23(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

併存疾患を有する消化器癌の治療方針と術前・術後管理における注意点

タイトル 外PD23-6:

High risk例での肝腫瘍に対する腹腔鏡下肝切除のFeasibility

演者 大塚 由一郎(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科)
共同演者 土屋 勝(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科), 金子 弘真(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科)
抄録 腹腔鏡下肝切除術(LH)は、肝腫瘍に対し根治性と低侵襲性を有する治療として役割を急速に増している。我々はHigh risk例におけるLHのFeasibilityを検討した。【適応】腫瘍が外側区域や、S4a,S5,S6の表面にある境界明瞭な病変への外側区域切除や部分切除が好ましい適応である。また肝頭背側の腫瘍や外側区域以外の系統切除に関しても必要に応じHALSや腹腔鏡補助下手技を併用し適応している。ADL良好で十分なinformed consentが得られれば年齢に制限はない。肝を含む臓器機能は開腹移行の可能性から開腹肝切除に耐えうることを条件とし、抗凝固剤使用例・糖尿病例では原則術前1週間前に入院のうえヘパリン化・血糖管理をそれぞれを行っている。肝切離においてはCO2塞栓予防に配慮し低圧気腹下(8mmHg≧)にenergy deviceを用いつつ出血制御に努めている。【対象】1993年より施行したLH148例中、75歳以上の高齢者群23例と非高齢者群125例、および肝以外の臓器機能低下因子(心;NYHA II°以上、肺;COPD severity3以上、腎;CKD stage3以上、膵;Insuline療法を要する糖尿病、脳;後遺症を有する血管障害)を一つ以上有する臓器機能低下群43例と臓器機能非低下群105例をそれぞれ比較した。【結果】臓器機能低下群では10例(23.3%)で臓器機能低下因子の重複をみとめ、5例が透析を施行していた。LH148例の術後在院期間は平均10.7日であった。術後合併症は11.5%で脳梗塞1例を除きいずれもClavien Grade2以下でありCO2塞栓、肝不全や周術期死亡はなかった。高齢者群vs.非高齢者群および臓器機能低下群vs. 臓器機能非低下群において、出血量、手術時間、術後在院期間、合併症発生率にいずれも差をみとめず、周術期の併存疾患増悪例はなかった。【結語】LHはHigh risk症例において厳格な適応選択と周術期管理により安全に施行でき、かつ良好な術後QOLも期待できるメリットの大きい術式と考える。
索引用語 肝腫瘍, 腹腔鏡下手術