セッション情報 パネルディスカッション23(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

併存疾患を有する消化器癌の治療方針と術前・術後管理における注意点

タイトル 外PD23-7:

術前DCF療法後の食道癌切除例における術後合併症のリスク因子の解析

演者 渡邊 雅之(熊本大・消化器外科)
共同演者 馬場 祥史(熊本大・消化器外科), 馬場 秀夫(熊本大・消化器外科)
抄録 【目的】術前DCF療法後の食道癌手術における術後合併症の特徴とリスク因子を明らかにする。【方法】2008年10月から2011年3月に術前DCF療法後に食道癌手術を施行した51例を対象。DCF療法はドセタキセル60mg/m2をday1に、シスプラチン6mg/m2、5-FU 350mg/m2をday1-5に投与し、3週毎に2コース施行。手術は開胸開腹で3領域または反回神経領域を含む2領域郭清を施行。術後合併症の内訳を2008年9月までに術前無治療で切除再建術を施行したリンパ節転移陽性食道癌症例39例を対象とし比較。DCF後切除例における術前患者側因子10項目、術前腫瘍側因子5項目、化学療法関連因子11項目、手術関連因子4項目と術後合併症発生との関連について検討。【成績】DCF後切除例では28例(54.9%)に術後合併症を認めたがその頻度は術前無治療群と差がなかった。肺合併症7.8%、縫合不全13.7%は術前無治療群と有意差なく、反回神経麻痺9.8%は術前無治療群に比較して少なかった。SSIは術前無治療群に比較して多く、特に縫合不全を伴わない創感染が多い傾向を認めた。術前患者側因子では合併症発生例でBMIが有意に高く(23.4 vs. 21.0、P=0.0023)、循環器併存症が多い傾向にあった(16/28 vs. 8/23、P=0.07)。術前腫瘍側因子に差を認めなかった。化学療法関連因子では合併症発生例で治療後の末梢血総リンパ球数(TLC)が治療前に比較して低下、非発生例では増加していた(-14.6 vs. +9.5、P=0.0004)。手術関連因子では手術時間が合併症発生例で有意に長かった(540 vs. 482、P=0.020)。これらの4項目を独立因子とした多変量解析を行うと、TLC変化率(OR -2.901、95%CI 0.903-0.980、P=0.0037)、BMI(OR 2.412、95%CI 1.094-2.379、P=0.0016)が術後合併症の独立した危険因子であった。【結語】化学療法に伴う免疫能の低下が術後合併症の発生に関与することが示唆された。化学療法中の十分な栄養管理が必要であるとともに、TLC低下例においては感染性合併症の発生に留意した慎重な周術期管理が必要と考えられた。
索引用語 食道癌, 術前DCF療法