セッション情報 |
パネルディスカッション23(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)
併存疾患を有する消化器癌の治療方針と術前・術後管理における注意点
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タイトル |
外PD23-8:食道癌術前治療が周術期生体反応に及ぼす影響とその病態解析に関する検討
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演者 |
辻本 広紀(防衛医大・外科) |
共同演者 |
小野 聡(防衛医大防衛医学研究センター・外傷研究部門), 長谷 和生(防衛医大・外科) |
抄録 |
【目的】近年進行食道癌に対する術前治療の臨床的有効性が報告されているが、術前治療が周術期生体反応に及ぼす影響については十分に検討されていない。そこで食道癌術前治療が術後合併症の発生に及ぼす影響を臨床的に解析するとともに、放射線胸部照射が肺組織に与える影響について実験的に検討した。【方法】臨床:当科で施行した根治食道癌手術113例を対象に、前治療なし群(無し群)42例、術前化学放射線療法施行群(CRT群)31例、術前化学療法施行群(NAC群)40例に分け、臨床病理学的因子、周術期SIRS診断基準項目、SIRS期間、肺酸素化能(P/F値)、術後合併症発生率、血中HMGB-1濃度について比較した。実験: C57BL/6雄性マウスに8Gyの胸部照射2週間後に非致死量のLPSを静注した(照射群)と非照射群(LPS投与のみ)の間で、末梢血白血球数・分画、血漿・肺胞洗浄液(BALF)中MIP-2濃度、肺組織中MPO活性、E-selectin濃度、肺血管透過性について比較した。【成績】臨床:CRT群は、術前の白血球、リンパ球数が他の2群に比べ有意に低値で、第5病日のP/F値も有意に低かった。CRT群は無し群に比べ、脈拍数が有意に多く、呼吸器合併症の発生率が高く、術後SIRS期間、ICU滞在期間、入院期間が有意に長かった。また術前のHMGB-1濃度はCRT群が無し群に比し有意に高値で、第3病日P/F値と有意に負の相関を認めた。実験:照射群は非照射群に比し、BALF中MIP-2濃度、肺組織中MPO濃度が有意に高かった。LPS投与後の血漿・BALF中MIP-2濃度は、3, 6時間後で、肺組織中E-Selectin濃度は3時間後、肺血管透過性は6時間後において照射群が非照射群に比し有意に高値であった。【結論】食道癌に対する術前CRT施行例は術前HMGB-1濃度が有意に高く、術後合併症発生率の増加やSIRS期間の延長を認めた。また放射線胸部照射による肺障害には、ケモカイン産生の亢進やLPSに対する反応性の増大による血管内皮障害、肺血管透過性亢進などの病態が関与していると推察された。 |
索引用語 |
食道癌, 侵襲 |