セッション情報 パネルディスカッション23(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

併存疾患を有する消化器癌の治療方針と術前・術後管理における注意点

タイトル 外PD23-9:

併存症を有する食道癌患者の外科的治療:縦隔鏡補助下食道切除と胸腔鏡下食道切除

演者 小出 直彦(信州大・消化器外科)
共同演者 鈴木 彰(信州大・消化器外科), 宮川 眞一(信州大・消化器外科)
抄録 「目的」日本消化器外科学会2008年度報告による食道切除再建手術関連死亡率は3.63%と低くない。食道癌症例では併存症の存在により治療選択の制限を考慮せざるを得ない場合やサルベージ手術や他臓器重複癌の問題も存在する。これらの症例に縦隔鏡補助下食道切除術(MAE)を行い、胸腔鏡下食道切除術(TSE)症例と比較し、併存症を有する食道癌症例の外科切除に関して術前、術中、術後の問題点を検討した。「方法」食道切除再建術を施行した153例の食道癌症例を対象とした。術式の適応はT3症例で右開胸、T1/2症例はTSE(37例)を基本とし、併存症を有し右胸腔アプローチが困難と考えられた17例にMAEを施行した。「成績」MAE群とTSE群を比較し年齢、性差、占拠部位、サイズ、組織型、pT、pNに差を認めなかった。併存症はMAE群において呼吸器、心血管、肝疾患、他臓器重複癌が多く認められた。術前検査ではMAE群で%VC、FEV1/FVC、PaO2が低値で、ICG R15とHbA1cが高値であった。ASA physical statusはMAE群で高度であった。右胸腔アプローチを避けた主因は肺癌切除後5(CRT後2)、喘息2、COPD4、両側陳旧性肺結核1(RT後)、右肺非定型抗酸菌症1(CRT後)、慢性心不全1(CRT後)、肝硬変3例(RT後1)であった。MAE群の平均手術時間は413分でTSE群と比べて短かったが、平均出血量は434 mlで差を認めなかった。MAE群で開胸移行例を認めなかった。術後合併症はMAE群で肝障害遷延2(肝硬変)、縫合不全1(サルベージ)、無気肺2/ 肺炎1(いずれもCOPD;術後気管支鏡吸痰頻回)、創感染2例(肝硬変)を6例(35.3%)に認めたが、TSE群と差を認めなかった。両群でClavien classificationのgradingに差を認めなかった。すべての食道癌手術症例で手術関連死亡を認めなかった。「結語」併存症を有し右胸腔アプローチが困難な食道癌症例に対してMAEは重篤な合併症や手術関連死亡がなく安全に施行可能であった。既往歴、前治療歴、術前の臓器機能評価によって術式を決定し、術前評価に対応した術後管理が重要と考えられた。
索引用語 食道癌, 併存症