セッション情報 パネルディスカッション23(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

併存疾患を有する消化器癌の治療方針と術前・術後管理における注意点

タイトル 外PD23-10:

食道癌手術に対する侵襲軽減の試み-適応拡大を目指して-

演者 芝﨑 暎仁(国保松戸市立病院・外科)
共同演者 尾形 章(国保松戸市立病院・外科), 宮崎 勝(千葉大大学院・臓器制御外科学)
抄録 【背景】食道癌術後の免疫能低下は周術期管理における最大の問題である。近年、基礎実験においてケモカインの一つであるmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)が侵襲時に細胞性免疫能低下に深く関与することが示唆されているが、臨床報告は非常に少ない。また、シベレスタットナトリウムは侵襲下に好中球から放出されるエラスターゼを阻害するため、侵襲反応を軽減する効果が期待されている。【目的】食道癌手術は侵襲が高度であり、高齢者や糖尿病、心疾患等の合併症を有する患者に施行する際には細心の注意が必要である。当院では食道癌手術をより安全に行うため、侵襲(反応)軽減を目的として、1.腹臥位胸腔鏡下食道亜全摘術の導入、2. 術中術後のシベレスタットナトリウム投与を行い、高齢者や術前加療後においても比較的安全な周術期管理ができている。今回我々は胸腔鏡手術とシベレスタットナトリウム投与による侵襲反応軽減効果について検討した。【対象】2008年7月より2011年3月までに食道癌に対し、腹臥位胸腔鏡下食道亜全摘術を施行し、周術期(術直前より術後3日目まで)にシベレスタットナトリウムを投与した18例(A群)と、それ以前に右開胸開腹食道亜全摘術を施行した12例(B群)【方法】周術期(術前、術後1時間、術後12時間、術後3日目、術後7日目)の血清IL-6、MCP-1、CRPを測定し、術後合併症、SIRS期間、在院日数とともに比較検討した。【結果】A群ではB群と比較し血清IL-6、MCP-1、は術後1時間、12時間において、血清CRPは術後3日目において有意に低値であった。またA群はB群と比べ、術後合併症は有意に減少し、術後SIRS期間、術後在院日数も有意に短縮した。【結語】腹臥位胸腔鏡下食道亜全摘術とシベレスタットナトリウム使用は、食道癌手術の侵襲(反応)抑制に寄与した可能性が示唆された。高齢者や併存疾患を有する場合の高度侵襲手術に対する適応拡大に非常に有用であると考えられた。
索引用語 腹臥位胸腔鏡下手術, 血清MCP-1