セッション情報 パネルディスカッション23(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

併存疾患を有する消化器癌の治療方針と術前・術後管理における注意点

タイトル 外PD23-11:

大動脈瘤を合併した大腸癌手術症例 合併症の検討

演者 楢原 克典(東京医大・3外科DELIMITER熱海所記念病院・外科)
共同演者 土田 明彦(東京医大・3外科), 青木 達哉(東京医大・3外科)
抄録 【目的】近年、高齢化社会に伴い合併症を有する大腸癌手術症例が増加している.これらの手術は併発症の治療の進歩とともに周術期の進歩 チーム医療の実践などによって安全に行われるようになってきた.しかし、進行大腸癌と大動脈瘤の合併例については大腸癌手術が準汚染手術のため人工血管や動脈瘤の感染など様々な問題がある.そこで当科で経験した大動脈瘤と合併した大腸癌手術症例について検討した.
【方法】1996-2010年の15年間に当科で大腸癌として手術を行った約1800例のうち,同時にもしくは先行して大動脈瘤が併存した症例を検討した.
【成績】大動脈瘤を併せもった大腸癌手術症例は18例であった.その内訳は,男性15例 女性3例 平均年齢は74.4±10.0歳.胸部大動脈瘤が5例 腹部大動脈瘤が14例 (1例重複).大腸癌の占拠部位は虫垂2例 上行結腸5例 横行結腸1例 下行結腸1例 S状結腸7例 直腸2例であった.胸部大動脈瘤は、2例が血管手術先行,3例は経過観察のまま大腸癌手術が実施された.腹部大動脈瘤は、8例が血管手術先行,6例に大腸癌手術が先に行われた.合併症は,血管手術先行10例のうち,血管手術後にイレウスを発症し緊急で大腸癌手術をした1例と大腸癌手術後に吻合部狭窄を発症し再手術となった1例の計2例で、この2例とも血管手術はステントグラフト内挿術であった.大腸癌手術先行9例では,感染性腹部瘤の悪化を認め緊急手術になった1例,術後イレウスを発症した1例の計2例を認めた.
【結論】術後の大きな合併症は,腸閉塞の頻度が高く,ステントグラフト内挿術で開腹操作を伴わない症例や,動脈瘤に対しては経過観察の症例でも同様に発症していた.胸部瘤手術の症例の合併症でイレウスは認めなかった.胸部瘤と腹部瘤重複例ではイレウスを発症していた.腹部瘤では癒着性イレウスでなく,瘤そのものや血管手術による血流の変化が イレウスの原因となっていると予想された.
索引用語 大動脈瘤, 大腸癌