抄録 |
肝細胞癌(HCC)の診断・治療の進歩は一時の停滞期を乗り越え新たな段階を迎えている。診断では肝特異性造影剤の出現により組織診断としての前癌病変である異型結節を多くの症例で早期肝細胞癌から鑑別できるようになった。一方、治療では局所療法の確立、分子標的治療薬の出現に加え併存肝病変のコントロールができるようになり、21世紀を迎えHCCの予後は着実に改善している。診断の分野では従来の血流画像に加え、肝細胞特異性画像(Gd-EOB-DTPA-MRI)とクッパー細胞特異性画像(造影超音波後血管相)が得られHCCの診断概念は急速に変わりつつある。また、治療の分野でもB型肝炎では 核酸アナログの投与で大多数の症例で肝機能は改善し、C型肝炎ではペグインターフェロン+リバビリンの投与で一部の症例で肝炎の完治が得られるようになった。これによって併存肝疾患を気兼ねすることなく積極的な治療が可能となった。比較的早期の局所病変は肝切除やラジオ波焼灼術(RFA)の技術の効果判定が進歩し大多数での制御が可能となり、局所再発は明らかに減少した。術前に腫瘍の肉眼型や組織分化度を正確に診断し、この患者に肝切除を行うかRFAを行うかを決定することは極めて重要となる。一方、進行HCCでは、肝動注や分子標的薬をいかに組み合わせて有効な治療を行うかが課題となっており、各種臨床試験が進行中である。しかし、HCCを早期に発見し治療することが患者の生命予後を本当に改善するか否かの科学的根拠は得られていない。すなわち、lead time biasの問題が解決された訳ではないからである。HCCの併存肝病変が良好になってきたが、患者の高齢化が著しい。患者の状態・病態に応じて、やさしい・制御能の良い治療を選択することが大きな課題と考えている。本ワークショップでは診断と治療のoverviewを行い、DPC時代の望まれる診断法・治療法についても言及したい。 |