セッション情報 ワークショップ1(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

肝細胞癌の診断および治療の工夫

タイトル 肝W1-1:

慢性肝疾患においてEOB-MRI肝細胞相にみられる低信号乏血性結節の多血化と増大速度について

演者 岡田 真広(近畿大・放射線診断学)
共同演者 今井 康陽(市立池田病院・消化器内科), 村上 卓道(近畿大・放射線診断学)
抄録 【目的】慢性肝疾患においてEOB‐MRI肝細胞相でしばしば低信号の乏血性結節が検出される。このような結節の多血化率、増大速度について検討した。【方法】EOB-MRI肝細胞相で円形の低信号を呈する乏血性結節で,未生検にて2回以上EOB-MRIで経過を追えた慢性肝疾患68例160結節を対象とした。肝細胞相は20分後の脂肪抑制併用3D-T1強調Gradient Echo画像で撮像した。EOB-MRI、造影CT,造影US、CTHAのいずれかで多血化したものは観察終了とし,初回MRI肝細胞相における結節の最大径,観察期間中の最終MRIまでの腫瘍容積倍加時間(tumor volume doubling time; TVDT)を検討し、TVDTの逆数を腫瘍増大速度(GR)と定義した。【結果】観察期間中央値は342日。は50/160結節(31%)にみられた。初回MRIでの結節最大径は2-34mm(中央値7.6mm)で,多血化群と非多血化群間に有意差はなかった.Cox回帰分析にてT2WI高信号(HR 9.5,95%CI1.2-9.6)、局所治療歴(HR 5.7,95%CI2.0-15.8)、Child-Pugh class B(HR 3.5,95%CI1.2-9.6)が多血化に関与する独立因子にとして抽出された。また、多血化結節が非多血化結節に比して有意にGRが高値であった(0.0084±0.0084 vs 0.0010±0.0055、P<0.001)。ROC解析でのGRのカットオフ値は0.0026/day(TVDT,381日)で、1年累積多血化率はGR0.0026/day以上群がGR0.0026/day未満群に比し高率であった(53.0%vs2.4%,P<0.001)。【考察および結論】EOB-MRI肝細胞相で低信号を呈する乏血性結節のうち31%が多血化した。特に増大速度の速い結節が肝細胞癌である特異度が高いと考えられた。EOB-MRIが早期肝細胞癌の検出に有用で(Eur Radiol 2010、J MRI 2010)、多血性肝細胞癌の診断でもAFROC解析にてEOB‐MRIがMDCTより高い診断能を有することを報告してきた(RSNA2009)。今回の結果も含め、EOB‐MRIは感度、特異度が高く、被曝もない肝細胞癌のスクリーニング法になりうると考えられた。
索引用語 EOB‐MRI, 肝細胞癌