セッション情報 ワークショップ1(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

肝細胞癌の診断および治療の工夫

タイトル 肝W1-2:

EOB-MRI肝細胞相で低信号を呈する乏血性結節の治療方針

演者 小松 信俊(山梨大附属病院・消化器内科(1内科))
共同演者 雨宮 史武(山梨大附属病院・消化器内科(1内科)), 榎本 信幸(山梨大附属病院・消化器内科(1内科))
抄録 【背景・目的】病理組織を用いたこれまでの検討でEOB-MRI肝細胞相で低信号を示す乏血性結節の約90%が肝細胞癌であった。このような結節に関して腫瘍の多血化に着目して検討を行った。【対象・方法】2008年1月~2010年11月に3ヶ月以上の間隔をおいてEOB-MRI肝細胞相で低信号を呈し、動脈相や後期相で腫瘍が認識できない194結節(72症例)を対象とした。経過中に2mm以上結節径が増大した結節を「増大」と評価し、経過中の造影CT、CTHAまたはEOB-MRIの動脈相で濃染が確認された結節を「多血化」と評価した。【結果】観察期間3~33ヶ月(平均観察期間17.8ヶ月)。経過観察前の結節径3~26mm(平均結節径8.6mm)。背景肝はB型/C型/アルコール/その他が15/53/3/4症例。194結節のうち26%(51/194結節)が増大し、19%(37/194結節)が多血化した。多血化群/非多血化群の結節径の中央値は15/7mmで、多血化群は有意に結節径が大きかった(P<0.001)。そこで結節径を8mm未満/8~14mm/15mm以上に層別化すると多血化割合は2/16/86%で、15mm以上の結節は有意に多血化リスクが高かった(平均多血化期間16.5ヵ月)。多血化因子に関する単変量解析では年齢65歳以上(P=0.007)、結節径15mm以上(P<0.0001)、増大あり(P<0.0001)、T1WIで脂肪抑制あり(P=0.018)が検出されたが、多変量解析では結節径15mm以上(P<0.0001)のみが有意な因子として残った。また、8~14mmの結節に関しては造影超音波検査を併用することでより早期に多血化を発見できる可能性が示唆された。【結論】肝細胞相で低信号を示す8mm未満の結節では多血化リスクが低く、経過観察が可能である一方で、15mmを超える結節では多血化リスクが高く、早期に治療が必要である。また、多血化の早期診断には造影超音波検査が有用であると思われた。EOB-MRI肝細胞相の乏血性結節はその大多数が病理組織学的に肝細胞癌であるが、治療方針の決定には結節径を考慮する必要がある。
索引用語 EOB-MRI, 多血化