セッション情報 ワークショップ1(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

肝細胞癌の診断および治療の工夫

タイトル 肝W1-8:

肝表面に位置する肝細胞癌に対するヒアルロン酸ナトリウムの肝表面局注・留置によるラジオ波焼灼療法

演者 豊田 秀徳(大垣市民病院・消化器内科)
共同演者 熊田 卓(大垣市民病院・消化器内科), 多田 俊史(大垣市民病院・消化器内科)
抄録 【目的】肝表面に位置する肝細胞癌(HCC)に対し経皮的にラジオ波焼灼療法(RFA)を施行する場合、焼灼範囲が腹膜・腹壁におよぶ可能性があり従来は人工腹水法や腹腔鏡下RFAなどの方法がとられてきた。われわれはヒアルロン酸ナトリウム(以下ヒアルロン酸)を病変部の肝表面に局注することにより病変部位と腹壁の距離を維持しつつ経皮的RFAを試み、良好な治療成績を得たので報告する。【方法】腹腔内へのヒアルロン酸注入の安全性を確認後、肝表面のHCC症例19例(男性15例:女性4例、年齢71.1±5.3歳)に対し、PEIT針を用いてエコーガイド下でヒアルロン酸10~20mLを肝表面に留置する形で注入した。RFA翌日に腹部エコーを、また3~5日後に効果判定を行った。なお施行前に施設のIRBにより承認を得た上で行った。【成績】全例においてヒアルロン酸注入後RFA終了までヒアルロン酸は肝表面に停留し、腹壁と腫瘍の距離は維持されていた。全例でRFA翌日の腹部エコーでは肝表面のヒアルロン酸は消失していた。術中・術後とも腹膜や腹壁の熱傷にともなう症状や炎症等はみられず、効果判定では肝表面の突出部位も含めて全例が1回の手技で腫瘍全体がよく焼灼されていた。術後1~21ヵ月の経過観察で局所再発を認めた症例はなかった。【結語】今回の検討ではヒアルロン酸を経皮的局注により肝表面に留置することにより長時間注入部位に停留し腹壁と肝表面との距離を保つことが可能であった。また、肝表面への留置によりB-modeエコー上肝表面のHCCはより明瞭に描出された。肝表面に位置するHCCに対してRFAを施行する場合、本方法にて腹壁と肝表面との距離を保ちつつ穿刺・焼灼を終えることが十分に可能であり、また手技的に簡便で患者への負担も軽いことから肝表面のHCCに対するRFAの有力な補助手段となる可能性が示唆された。
索引用語 肝細胞癌, ラジオ波焼灼療法