セッション情報 ワークショップ1(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

肝細胞癌の診断および治療の工夫

タイトル 外W1-9:

肝障害度B,C肝癌症例に対する腹腔鏡下肝切除の検討

演者 岡田 克也(埼玉医大国際医療センター・包括的がんセンター消化器病センター消化器外科)
共同演者 宮澤 光男(埼玉医大国際医療センター・包括的がんセンター消化器病センター消化器外科), 小山 勇(埼玉医大国際医療センター・包括的がんセンター消化器病センター消化器外科)
抄録 【目的】高度肝障害症例に対する肝切除術では、その手術侵襲により、しばしば術後肝機能が悪化し、生命予後へ重大な影響を与えることがある。一般的に肝切除術は、小さい病変であっても比較的大きな開腹、肝の授動、肝阻血などが必要であり、肝機能を含めた全身状態へ悪影響を与える。我々は、肝障害を有する肝癌症例に対し、積極的に腹腔鏡下手術を導入し、良好な成績を得ている。今回は、高度肝障害を有する肝癌症例に対する腹腔鏡下肝切除術(LapH)の手技を供覧し、その安全性と有用性を検討した。【方法】2008年1月より2010年12月まで、当科で施行したLapH(胸腔鏡下・腹腔鏡補助下を含む)30例中、肝障害度B,Cの10例を対象とした。症例の内訳は、男性8例、女性2例、平均年齢70歳(52-90)、肝障害度B;9例、C;1例であった。疾患の内訳は、肝細胞癌9例、肝内胆管癌1例であった。LapHを選択した理由として、腫瘍が肝表面に突出;7例、胆嚢や腸管が近接;3例が挙げられ、すべて経皮的局所治療が困難な症例であった。腫瘍径は平均1.7cm(0.8-2.8)、局在はS2;1例、S3;2例、S4;1例、S5;3例、S6;1例、S7;1例、S8;1例であった。腹腔内へのアプローチは、3ポートの完全腹腔鏡下手術7例、単孔式腹腔鏡下手術3例であった。肝実質切離は低電圧バイポーラー鉗子により肝実質をクラッシュしながら、脈管を同定し、バイクランプにより脈管をシーリング、切離した。断面からの出血には、吸引付モノポラー低電圧凝固装置を用いた。【結果】手術時間は平均169.4分(129-250)、出血量は平均30ml(0-150)であった。術後在院日数は6.7日(3-11)、手術関連合併症は1例に無気肺を認めたのみであった。術後ASTのピーク値は184.1 IU/L(57-331)であり、術後肝不全傾向となった症例は認めなかった。【結語と考察】LapHは、肝障害度B,C症例に対しても安全に施行でき、経皮的局所治療が不可能な肝癌症例に対する治療法の一選択肢となり得る。
索引用語 腹腔鏡下肝切除, 肝障害度