セッション情報 |
ワークショップ1(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)
肝細胞癌の診断および治療の工夫
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タイトル |
消W1-10:肝細胞癌に対するミリプラチンを用いた肝動脈化学塞栓療法の有効性と安全性
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演者 |
近山 琢(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科) |
共同演者 |
今井 幸紀(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科), 持田 智(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科) |
抄録 |
【目的】肝細胞癌に対する肝動注用製剤であるミリプラチンを用いた肝動脈化学塞栓療法(TACE)の有用性は確立していない。そこで,当院で同製剤を用いてTACEを施行した症例をもとに,有効性と安全性を検討した.【対象と方法】対象は2010年2月~12月にミリプラチンを用いてTACEを施行した肝細胞癌235例(平均年齢71歳)で,うち70例(30%)は初回治療例であった。肝障害度はChild-Pugh Aが147例、Bが87例、Cが1例。肝癌病期はIが27例,IIが48例,IIIが139例,IVが21例。腫瘍径に応じてミリプラチンを最高120 mgまで動注し,次いで多孔性ゼラチン粒を必要量投与した。多発例では肝予備能から可能な範囲内で塞栓術を実施した。抗腫瘍効果は1ヶ月後のCT所見から,肝癌治療直接効果判定基準(TE)に基づいて判定した。有害事象はCTCAE基準にて評価した。【結果】ミリプラチンの投与量は10~120mg(中央値66 mg)であった。137例で治療効果判定が可能であり,TE1が9例(6.6%),TE2が39例(28.5%),TE3が43例(31.4%),TE4が46例(33.6%)であった。肝癌病期別ではstage I,IIではTE3以上が91.2%であったのに対して,stage III,IVではこれが46.3%であり,抗腫瘍効果は不良であった(p<0.0001)。また,初回治療例ではTE3以上が78.9%であったのに対して,再治療例では55.0%であり抗腫瘍効果が不良であった (p<0.005)。CTCAEでgrade 3以上の有害事象は50例(21.3%)でみられ,ASTまたはALTの上昇が39例(16.6%),T-Bil上昇が2例,白血球減少が3例,血小板減少が4例,発熱が1例,食欲不振が1例で認められたが,いずれも一過性であった。【結語】ミリプラチンを用いたTACEは,安全性に関しては動注療法と大差はなく,問題はないと考えられた。しかし,その有効性について病期III以上の進行例および再治療例では十分でなく,その対策を考慮する必要がある。 |
索引用語 |
ミリプラチン, TACE |