セッション情報 ワークショップ2(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

GALT研究の最前線

タイトル W2-基調講演:

GALTは慢性大腸炎発症及び維持に必須か?

演者 金井 隆典(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者
抄録 腸管は多様かつ膨大な腸内細菌、食餌などの抗原の暴露にもかかわらず、一層の上皮細胞によって外部と接する特殊な臓器である。また、免疫活性化のリスクをはらんだ臓器にもかかわらず平時では免疫の寛容が保たれて消化と吸収という第一義的な機能を効率よく担っている。共生する腸内細菌に対しては免疫寛容を維持し、一方病原微生物がひとたび侵入すると瞬く間に自然免疫系が発動され効率よく獲得免疫系へと転換し病原体の排除を行なう。腸管は寛容(Tolerance)と免疫(Immunity)を精巧に使い分ける。この機構を担うのが免疫の導入部位であるGALT;Payer板、孤立リンパ小節、クリプトパッチ、腸間膜リンパ節という腸管独特なリンパ装置と考えられてきた。今なおGALTは謎多き免疫学の一大ミステリーである。例えば、Payer板、孤立リンパ小節のドームを覆う特殊な上皮細胞、Follicule-associated epithelium(FAE)のなかでも、Microfold細胞(M細胞)が微生物の取り込みに重要と考えられてきたが、最近、GALT以外の上皮細胞にもスポットにM細胞が存在することが明らかとされ、実行部位(effector site)である粘膜固有層もGALT同様の機能を有する可能性が示唆されている。我々はGALTの欠損したLTα-/-×RAG-2-/-マウスにCD4CD45RBhigh T細胞を移入してもIBD類似慢性大腸炎が発症することを明らかとしてきた。またGALTをさらに複雑しているのが、GALTの形成に必須なRORγt分子の存在とLymphoid tissue inducer(LTi) cellを代表するInnate lymphoid cell(ILC)の発見である。LTi細胞の発生でもRORγt依存性で、これまで胎児期に最初に腸管へ移入しGALT形成に必要な細胞と考えられてきた。しかし、LTi細胞は成熟マウスにも存在し(LTi-like細胞)、GALTとは関係なく腸炎惹起性IFN-γ産生ILCも存在することもわかってきた。我々は最近、GALTもLTi-like細胞も欠損したRORγt-/-×RAG-2-/-マウスでも慢性大腸炎が誘導できることを証明している。GALTに関する最近のデータとともに論じたい。(研究協力;三上洋平、筋野智久、久松理一、渡辺守、日比紀文)
索引用語 寛容と免疫, Lymphoid tissue inducer (LTi) like cell