セッション情報 ワークショップ2(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

GALT研究の最前線

タイトル 内W2-5:

炎症性腸疾患におけるパイエル板微細病変観察の臨床的意義

演者 松島 加代子(長崎大・消化器内科)
共同演者 磯本 一(長崎大・消化器内科), 中尾 一彦(長崎大・消化器内科)
抄録 【緒言】炎症性腸疾患(IBD)の病態にせまる上でパイエル板(P板)の内視鏡的微細観察は重要となる可能性がある。
【対象と方法】研究1:クローン病(CD)患者18例に対して、通常倍率下でP板の基本形態を分類した(藤倉らの分類)のち、拡大内視鏡観察によってP板のドーム領域表面構造を観察した。また、P 板領域内での特異的病変や微細病変の有無を検討した。同部の狙撃生検を行って、走査電顕による超微細形態を観察した。潰瘍性大腸炎(UC)患者25例でも同様に拡大内視鏡観察と病理組織学的検討を行った。研究2:CD、UC患者に対し、オリンパス社製試作機エンドサイトを用いた超拡大観察を行い、その所見を比較検討した。
【結果】研究1:小腸・大腸型が14例、小腸型が4例であった。2例のみがLF型(結節・顆粒状)、14例は平坦なLA型、2例は中間型LB型であり、同時期に観察した非IBD対照者と比較すると年令(平均30歳)に比しLF型の頻度が有意に少なかった。11例でP板内に縦走潰瘍や小潰瘍が、3例では微細なびらんが、ドーム領域に一致して観察された。拡大観察では、ドーム領域の表面不整が78%に認められた。走査電顕で、ドーム領域の凹凸、疎で不規則な絨毛、M細胞表面の不整などが確認された。同部の生検病理では44%と高率に肉芽腫が認められた。UC(平均40歳)では、P板内に微小びらんが5例、発赤が2例みられたが、病型や病勢との相関がなく、backwash ileitisや虫垂病変とは関連がなかった。研究2:CD患者(5例)の超拡大内視鏡所見として、i)ドーム領域の周囲絨毛の萎縮に伴うpit様構造の出現を3例に、ii)ドーム領域被蓋細胞の配列不均一性を4例に認めていた。一方、UC(6例)ではi)は0例でii)も2例にとどまった。
【結論】P板の微細構造観察により、CDにおける特徴的変化が観察された。さらにM細胞免疫染色などを加え、ドーム領域の細胞構成を比較検討する。
索引用語 炎症性腸疾患, パイエル板